ニッケイ新聞 2012年8月7日付け
2011年半ばから表面化し始めた景気の減速化が、雇用創出のペースダウンという形でも現れていると6日付エスタード紙が報じた。現時点ではまだ失業率の拡大には至っていないが、現在の雇用創出数は2008年11月のリーマンショック当時とほぼ同じレベルまで落ち込んでいる。
BRICS、新興国の勇と誉めそやされてきたブラジルも、昨年後半からは欧州経済危機などの影響で景気が減速し始め、今年上半期の雇用創出は85万8千に止まった。
この数字は、採用者数から解雇者数を引いた差で、労働省の全就労・失業者台帳(Caged)に基づいて計算される。昨年同期の雇用創出は126万5千だったから、今年上半期は40万7千少なく、史上最高の210万の雇用創出を記録した2010年以降、150万だった2011年、120万と予想される今年と、2年連続の雇用創出数減少は不可避だ。
上半期の場合、季節調整後の雇用創出数は6万8千で、リーマンショック直後の2008年11月の6万5千とほぼ同水準。ルーラ政権初年(2003年)1月の11万5千と比べると40%以上も縮小している。
景気減速で経済活動が衰退した場合の影響が最後に出るのが雇用といわれるが、今年上半期は、活動停滞中の工業はもちろん、雇用が順調だった建築や商業でも雇用創出が鈍っている。
これまでは熟練工が足りず、引く手あまただった建築業界で現場監督として働いてきたジョゼ・ドミンゴスさんも、景気減速で解雇された一人。数カ月前、他の会社からの引抜を断って現場に止まったドミンゴスさんにとり、解雇の知らせは寝耳に水だった。2009年以降の不動産ブームで仕事口は簡単に見つかるはずの建築業界も失速中で、あちこちに履歴書を送って面接を受けてみても、前の条件以下の職場しか見つからない。
経済活動が停滞し、債務不履行も増える中、新家屋購入をためらう消費者も増加。住宅建設の現場では、5〜6月の解雇者は新規採用者を2300人上回った。138万人といわれる建築業界の就労者数からいえば小さな数かもしれないが、2006年以降、就労者数が160万人から340万人に増えていた業界としては大きな変化だ。
現時点では採用者数が解雇者数を上回っているが、地理統計院(IBGE)発表の失業率は6大都市圏での雇用データを基に算定され、近年工業化が進む内陸部の雇用状況を反映していない事や少子高齢化で求職者数自体が減っている事などを考慮すると、失業率は最低水準の5・7%という言葉だけを鵜呑みにする事は出来ない。
下半期の動向如何では雇用創出が更に減る可能性は強く、今年は126万程度の雇用創出と見る専門家も、来年への懸念を隠せないのが現状だ。