ニッケイ新聞 2012年8月9日付け
夫からの暴行で障害を負った女性の名を冠した〃マリア・ダ・ペーニャ法〃発効から6年経ち、ルーラ前大統領が裁可した日に当たる8月7日から、暴行者には犯罪責任と共に賠償責任も問われるようになると7日付エスタード紙が報じた。
2006年8月6日裁可、同年9月22日発効のマリア・ダ・ペーニャ法は、正式には11340号と呼ばれ、家庭内やそれに準じた環境で起きる暴力事件を避けるために設けられた法律だ。
マリア・ダ・ペーニャさんは嫉妬深い夫に連日暴行されていたが、1983年に銃で撃たれて身体の自由が奪われた上、感電死と水死を狙った殺害計画にも巻き込まれ、夫を起訴。19年かけた裁判で8年の刑を受けた前夫が2年間服役後に出所した事を不服とするマリアさんの例を契機に、女性の命と権利を守るための法が作られた。
昨年の場合、暴行されたり迫害されたりして公的医療機関で治療を受けた20〜59歳の女性は3万7717人。この数は2010年より38・7%増え、1時間に4人強が暴行された事になるが、この数は中度から重度の身体被害を受けた女性の数に過ぎない。全年齢層の女性の暴行被害者は7万270人いた。
女性への暴行は肉体的なものが最多で78・2%、精神的なものは32・2%。性的なものが7・5%で、複数回暴行を受けた女性は38・4%いる。
暴行者の41・2%は夫や前夫、恋人、伴侶で、友人や知人による例は8・1%。見知らぬ人による例は9・2%に過ぎず、女性への暴行は大半が家庭内やそれに準じた環境で起きている。
家庭内暴力の摘発は本人でなくても起訴できるように改定された事で増え、専用電話180番への通報は1〜3月だけで20万件余り。暴行は2万4775件で、傷害から殺害までを含む身体的暴力は58%の1万4296件。生活基盤を失うのが怖くて泣き寝入りする女性が多く、起訴に至る例は少数派。裁判中に諦める例もある。
家庭内暴力の撲滅は困難だが、同法の効力を上げ、暴行事件回避のために7日から導入されたのが、裁判費用や、死亡、障害といった被害の程度にあわせて国立社会保険院(INSS)が支払っていた年金や扶養手当などの支払いを暴行者に科すという方法だ。労働災害を起こした会社に裁判経費やINSSが負担していた年金などの支払いを命じた例は、過去21年で2千件、支払額も3億6千万レアルに上り、昨年からは交通事故の加害者にも同様の責任が課せられるようになった。
〃マリア・ダ・ペーニャ法〃に基づく経費や賠償金支払い請求第1号は今年2月に妻を殺害し今月7日に判決の事件。夫には、3歳の遺児が21歳になるまでの月3859レアルの扶養手当と裁判費用の計20万9千レアルが請求される。