ニッケイ新聞 2012年8月11日付け
パラグアイとブラジルの境にあるイタイプ・ダムで発電した電力をめぐり、パラグアイのフェデリコ・フランコ大統領が「ブラジルにはもう電力を譲らない」と発言し、物議を醸している。10日付伯字紙が報じている。
8日、パラグアイのフランコ大統領は、「ブラジルとアルゼンチンに電力を譲るのはもうやめる」との発言を行った。パラグアイはブラジルとの間でイタイプ・ダム、アルゼンチンとの間でヤシレター・ダムを共同経営し、水力発電を行っている。
イタイプ・ダムについては、1973年にブラジルとの間で協定が交されている。それによると、このダムの所有権は50%ずつで、パラグアイが使わない電力はブラジルが買い取ることになっている。パラグアイの同ダムの電力使用はわずか5〜6%だが、それだけでパラグアイが必要とする電力の72・92%がまかなわれている。つまり、同ダムの発電量の約95%はブラジルが使用しており、ブラジルはそこから所有権のある50%を差し引いた45%分をパラグアイに支払っていることになる。ブラジルがこのダムから得ている電力はブラジル全体の動電力の17%ほどだ。
パラグアイ大統領の発言は、同国がルゴ前大統領を弾劾したことに対する制裁として、南米共同市場(メルコスール)の参加国資格を一時停止されたことへの報復との見方が広まっている。
これに対し、パラグアイのホセ・フェリックス・エスティガリビア外務大臣はフォーリャ紙の電話取材に応え、フランコ大統領の発言は悪い方に曲解されているとした上で「大統領が〃譲らない〃と言ったのはブラジルやアルゼンチンへの電力供給を止めるという意味ではなく、余剰電力の使用料金を現在の国際市場の現状と照らし合わせて見直したいという意味だ」との見解を示した。
余剰電力の使用料の規定は1986年に改定され、2005年と09年に料金の見直しが行われた。09年にルゴ前大統領政権の間で行われた見直しは、それまでの3倍の年3億9千万ドルで合意に達し、2011年に議会で承認された。
一方、イタイプ・ダムのパラグアイ側責任者であるフランクリン・ボッシア事務局長はエスタード紙取材に、「わが国の政府が望んでいるのは、国内の火力発電利用を減らし、イタイプ・ダムからのきれいな電力の利用をふやしていくことだ」と語った。だが、フランコ大統領は9日の企業家向けの演説で「ブラジルとアルゼンチンには、パラグアイの大統領が謝礼を受け取る代わりに、わが国の電力の恩恵を受ける時代が終わったことを理解していただかないといけない」と発言、伯ア両国への電力供給停止を再びほのめかした。
これに対しブラジル外務省は「ブラジルがパラグアイの電力を譲り受けているという事実は一切ない」との見解を改めて示し、協定遵守を求めている。