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高速鉄道建設計画が再浮上=技術と経験の有無強調=事業権譲渡パックの1つに=来年入札、さ来年着工か

ニッケイ新聞 2012年8月14日付け

 ジウマ大統領は15日に、リオ〜サンパウロ〜カンピーナスの3市間を結ぶブラジル版新幹線(高速鉄道、以下、TAV)の建設プロジェクトを官民連携(PPP)の事業譲渡(コンセッション)方式で進める方針を正式に発表する予定と11日付エスタード紙が報じた。

 リオ市とサンパウロ州2都市を結ぶTAV建設は、基幹構造(インフラ)整備プロジェクトの一つ。15日には国道40号線と116号線など、全長5千キロ超の高速道路網とTAVやサンパウロ州の環状鉄道、中西伯をつなぐ鉄道路線など、8千キロ超の鉄道路線網に関する計画が発表される予定で、空港、港湾の建設計画などは、後日発表される。
 これら一連のプロジェクトは、官民連携の事業権譲渡方式で行われるのが特徴。事業権譲渡方式とは、落札企業に建設後の一定期間の独占的営業権を与える形で事業運営を行うやり方だ。
 15日発表予定の事業の中で最も注目されるTAV建設はジウマ大統領がルーラ政権の官房長官だった時からの懸案で、2010年12月と11年4月、同7月の3回入札が試みられたが、未だに応札に至っていない。
 過去の入札が流れた理由の一つは、政府側が打ち出した建設費(2009年の時点で340億レアル)に対し、民間側の推定建設費は550〜600億レアルと両者の隔たりが大きい事で、建設後の利用客数が採算の取れるものとなるかなどの懸念も大きかった。
 一方、何としてもTAV事業を実現させたい政府は、高速鉄道公社(Etav)を8日に設立し、国家陸路運輸庁(ANTT)元長官のベルナルド・フィゲイレド氏を総裁に任命。従来の方針とは違い、採算割れとなる場合や、環境許可取得、土地の接収その他のリスクを全面的に負う事を前提にプロジェクトを進める。
 12日付フォーリャ紙によれば、入札規定は年内に再検討され、来年上半期には技術提供と列車運行を担当する鉄道事業者の選定、同下半期には工事と路線の運営を担当する業者選定のための入札を行う予定で、2014年着工、2018年か19年完成を目指す。
 なお、TAVの路線や駅の位置をEtavが決定。主要空港の事業権譲渡のための入札で経験の乏しい中小規模の事業者が落札した事もあり、高度な技術と経験を持つ事が技術提供と運営担当の事業者の条件だ。過去の事故発生率なども選定基準とされ、日本や韓国、中国のアジア勢とフランスやドイツ、スペイン、イタリアの欧州勢のせめぎ合いが予想される。
 前回の入札が不発に終わった後はTAVの実現を疑う声も高まっていたが、フィゲイレドEtav総裁は「ジウマ大統領は自分が大切だと考える事業を諦めるような人ではない」と発言。「我々の日程表に〃中止〃の2文字はなく、常に事業遂行を前提に物事を進めている」と強調している。