ニッケイ新聞 2012年8月15日付け
メンサロン事件の公判で13日、2005年に同事件を暴露したブラジル労働党(PTB)党首のロベルト・ジェフェルソン被告の弁護士が「メンサロン事件はルーラ前大統領が指示したものだ」と発言した。14日付伯字紙が報じている。
公判8日目の13日、ジェフェルソン被告を弁護するルイス・フランシスコ・コレア・バルボーザ弁護士が、事件の「司令を出したのはルーラ前大統領」とし、前大統領が被告席にいないのはおかしいとぶちまけた。
バルボーザ弁護士は、事件の調査を担当したロベルト・グレジェル連邦検察庁特捜局長に、「あなたには、前大統領は自分のひげの下で起きていた事に気づかないほどまぬけだなんて言うことはできないでしょう」と問いかけ、「前大統領は抜け目がない人です」「愚か者のはずはないでしょう。事件について知らないどころか、全ての司令はあの方から出ていたのですよ」と言い切った。
同弁護士の発言はジェフェルソン被告が事件を告発した時の証言と食い違う。ジェフェルソン被告は、郵便局を巡る贈収賄疑惑の渦中にあった05年7月、フォーリャ紙に、労働者党(PT)のデルービオ・ソアレス被告が進歩党(PP)と自由党(PL・現共和党)の議員に、政府を支持する代償に月3万レアルの賄賂を支払ったと告発した。ジェフェルソン氏もPTとの間で2000万レアルの賄賂受け取りで合意し、400万レアルを受け取ったことを認めたが、その際、「これはルーラ大統領(当時)の知らないところで起きたこと」とし、仕掛け人はジョゼ・ジルセウ元官房長官としていた。
だがバルボーザ弁護士は、ルーラ前大統領がこの事件に絡んでいた証拠として、ルーラ氏が2004年に賄賂の資金源となったBMG銀行と農業銀行に便宜を図ったことを訴えた上、「ルーラ氏が被告席にいないのは検察側の手違い」とまで言い切った。
膵臓ガンの手術後15日目のジェフェルソン被告は、リオ市の自宅のテレビでアナ夫人と共にこの模様を見守ったが、1992年に弾劾裁判で罷免された元大統領をたとえに出し、「これがコーロルだったら逮捕されていただろうな」とつぶやいた。同被告は、「バルボーザは自分で調査したことを語ってるんだ。BMGのことは私も知らなかった。もし、7年前に告発したとき知っていたら、ルーラを投げ飛ばしていたよ」と語った。
PTのジルマル・タット下院リーダーは「苦し紛れの戦略だ。あんな弁護士、失格だ」と切り捨てた。また、前大統領はこの件に対するコメントを出していない。
被告弁護は国会での票取りまとめのための贈収賄ではなく選挙の裏金問題という線で進められてきたが、その弁護も14日で打ち切られ、15日からは判事たちが票を投じ始める。