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ジウマ大統領=陸上輸送網整備の大プラン発表=30年で総額1330億レ=コスト高の問題解消狙い=「遂に民営化か」とPSDB

ニッケイ新聞 2012年8月17日付け

 ジウマ大統領は15日、インフラ整備と経済活性化のため、向こう30年で総額1330億レアルの投資という大規模な国道と鉄道の建設プランを発表し、民間企業の参加を呼びかけた。これにより交通網の民営化が進むことになる。15日付伯字紙が報じた。

 ジウマ大統領は、大統領府に多くの政界人や企業家たちを集め、「ロジスティック投資プログラム(PIL)」と名づけた一大プロジェクトの立ち上げを発表した。
 15日発表のPILは、9国道の複線化と延長(全長7500km)と12の鉄道路線(全長1万km)建設というもので、国道はゴイアス州やマット・グロッソ州を中心とし、鉄道はペルナンブーコ州〜ミナス・ジェライス州、ロンドニア州〜リオ州、サンパウロ州〜南大河州を結ぶ路線などが含まれる。鉄道は工業原料や農産物などの貨物輸送が主要な用途だ。
 政府は投資規模を1330億レアルとしているが、国で全てをまかなう力はなく、外国企業の参加も視野に入れた民間企業の参加を求めている。投資期間は30年となってはいるが、13年4月には国道、同6月には鉄道の入札を行う予定で、国道で235億レアル、鉄道で560億レアルの計795億レアルは5年以内に投資される。また、投資額の80%までは社会開発経済銀行(BNDES)が融資するなど、公的資金の比重が大きいのも特徴だ。
 ジウマ大統領によると、15日発表分はPILの第1段階。PILが国内総生産(GDP)の成長にはねかえるのは2014年以降で、即効的な経済活性化効果はないが、「基幹構造(インフラ)の整備で、ブラジルの経済成長を妨げていた輸送費などのコスト高の問題が解消され、年4・5〜5%の安定成長が可能になる」と語った。
 だが、ジウマ政権の決断は従来の労働者党(PT)路線と矛盾するとの声も出ている。PTは、民主社会党(PSDB)のカルドーゾ政権(1995〜2002年)による民営化路線を徹底的に批判し、2010年の大統領選候補のジョゼ・セーラ氏にも同じ批判を繰り返していた。これに対し大統領は、「官民一体となって行う事業権譲渡は、PSDBが民営化と称して行った公的資産の投売りではない」との見解を示した。
 これに対しPSDBのセルジオ・ゲーラ党首は「ようやく民営化にたどり着くとは、政党としての成熟に時間がかかったな」と自身のツィッターで揶揄、「着手するのが遅すぎるし、この短い期日の設定ではGDPは上がらない」と批判した。アウキミンサンパウロ州知事は、ジウマ大統領のプラン自体は評価したが「サンパウロ州では15年前からやっているがな」と付け加えた。
 企業家の間では「コスト高の問題が解消され、ブラジルにとっては幸せな決断」とEBXのエイケ・バチスタ会長のような意見も見られるが、期日の遅れの心配や、報酬率が5・8〜6・5%と低いことが民間企業の参加を踏みとどまらせるのではないかとの見方もある。