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自然災害対策費が急増=わずか6年で15倍超に=リスク増大は世界的傾向

ニッケイ新聞 2012年8月18日付け

 サンパウロ市では16日、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」による「気候変動への適応推進に向けた極端現象及び災害のリスク管理に関する特別報告書(SREX)」が発表され、2004年〜10年のブラジルの自然災害対策費は6500万レアルから10億レアルに15倍以上増えた上、災害は激・増化傾向にあると17日付エスタード紙が報じた。
 サンパウロ州調査研究支援機関(Fapesp)と国立宇宙調査研究院(Inpe)による報告会では、自然災害などに直面した時に決断を迫られる人達や科学者に、ラ米やカリブ地区を中心としたデータが示された。
 それによると、自然災害の増加は世界的傾向で、1980年は数十億ドルだった被害額も2010年には2千億ドル以上に増加。ブラジルでも同様の傾向にある証拠が、6年で15倍超という自然災害対策費増加だ。自然災害や被害の増加は多方面で認められていたが、地球温暖化で自然災害が今後も頻発、激化すると見る報告書の内容は将来への警告でもある。
 同報告監修者の1人でブエノス・アイレス大学教授のヴィセンテ・バロス氏によると、自然災害は、海面温度の変化や降雨などの自然現象が引き起こす不安定な状況と、危険な状況下にある人々の存在が掛け合わされて起きる。ブラジルでも、北東伯や南東伯で平年以上の気温を記録した日は1950年代から増え始め、サンパウロ州の豪雨は70年前の3倍に増えている。
 気象学者のカルトス・ノブレ氏は、市街化が進み人口の都市部集中などが起きると、危険にさらされる人の数も増えると指摘。2009年のサンタカタリーナ州の水害で町全体が冠水し、2011年のリオ州山間部の土砂水害で山沿いの住宅が土石流で流されたりした事は記憶に新しい。
 大雨や干ばつは今後、その激しさや回数を増すと見られ、20年毎だったものが数年毎や毎年になる、あるいは大雨と干ばつが1年毎に繰り返し起きる可能性はさらに強まる。ここ10年間、アマゾナス州で大干ばつと大洪水が2回ずつ起きているのはその証拠だ。
 ブラジルの自然災害による被害者の70%は11%に当たる土砂崩れや地滑りによるもので、被害を最小限に抑えるには地盤の緩い所や災害が起きやすい所に住む住民数などの洗い出しが不可欠。
 9日付エスタード紙によると、政府は8日、干ばつや洪水予防用の貯水ダム建設などの予防策に156億レアル、危険地域の洗い出し作業に1億6200万レアル、警報システム整備に36万2千レアル、災害後の救済費26億レアルという、全国自然災害防止計画を発表。地政学や水利、土木、防災、社会福祉の専門家による全国危険対策班も結成されるという。

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