ニッケイ新聞 2012年8月22日付け
いろいろな人生があるものだ——。92年にJICAシニアボランティアとして渡伯した後、援協厚生ホーム、県連事務局長、在聖総領事館の現地職員などをしていた中村明人さん(65)が、4月から日本で町会議員になっていると聞き驚いた▼昨年6月末に突然、総領事館退職を告げるメールが来た。「退職後は帰国して当分の間、秋田の山奥の実家の町で暮らしながら、町の過疎対策、農業振興を手伝うことになりそうです」とだけあった▼具体的に何をするのか書かれておらず、どこか謎めいた文面だった。〃当分の間〃妻子をサントスにおいて単身で帰郷というのは、穏やかな話ではないなと思いつつ、内容から「もしや選挙?」とも推測したが、まさか当選するとは▼「実家」とは秋田県小坂町(人口約6600人)のこと。県北東部の十和田湖畔に位置し、明治時代には鉱山町として栄えた。調べてみると、今年3月に町議会選挙が実施され、立候補者15人中、4番目の得票数だった▼最高得票者は、組織票を期待できそうな公明党公認の女性候補で425票、最下位の12位は199票であり、中村さんは309票だから悪くない。しかも2位、3位は現職であり、無所属の新人で4位は上出来だ。きっと有能な選挙参謀がいるのだろう▼人懐っこそうな笑顔、温和で訥々とした口ぶりと口ひげがトレードマークで、いかにも「福祉の人」との印象が強い。政治家になるとは意外だった。これも錦衣帰〃国〃だ。自らにもう一花咲かせた経験をテコに、活力を失った故郷にもその手腕を発揮か。任期は4年間、県人会式典時に凱旋帰伯?(深)