ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | ベロ・モンテの工事また停止=承認手続きの問題指摘=雨季前再開に大きな疑問=労働者らの処遇はいかに

ベロ・モンテの工事また停止=承認手続きの問題指摘=雨季前再開に大きな疑問=労働者らの処遇はいかに

ニッケイ新聞 2012年8月25日付け

 パラー州シングー川に設けられるベロ・モンテ水力発電所の建設工事が、裁判所の命令によって23日朝から止まり、再開の目処さえ立たないため、直接・間接に雇われた1万4千人の労働者やアウタミラの住民の間に不安が募っていると24日付伯字紙が報じた。

 完成すれば世界で3番目となる1万1233メガワットの出力を持つはずのベロ・モンテ水力発電所は、2010年に入札を敢行、2011年6月に工事が始まった。
 工事開始後も、労働者のストや発電所建設に反対する先住民の侵入などで、30日ほど工事が中断した事があるが、今回の工事停止は、今月13日に第1地区連邦地方裁判所が下した命令によるものだ。判決によると、同発電所建設は、先住民の意見を十分聞かないうちに議会が承認しており、最高裁の合憲判断も出ていないという。
 ベロ・モンテ水力発電所の建設と運営を担当するノルテ・エネルジアでは、工事再開のためにあらゆる手段を講じる構えだが、連邦地裁が取り上げた理由が先住民からの意見聴取がなされてなかった点である事から、同社の上告は最高裁判所が扱う事になる。
 ところが、最高裁は現在、メンサロン事件の裁判の真っ最中で、七つに分けた項目の第1番目について、11人いる最高裁判事の内、最初の2人が票を投じ、その内容についての質疑が27日に行われるという段階。9月3日に定年退職となるペルーゾ判事も、7項目の内の一つしか票を投じられないとの見方が出ているのが現状だ。
 連邦地裁の工事停止命令に対する上告が扱われるのはメンサロン結審後で、雨季に入る11月以降に再開許可となれば、建設手順の見直しや乾季まで約6カ月間の工事延期も余儀なくされる。
 ノルテ・エネルジアとしては1日も早い再開を目指したいところだが、工事停止期間が長引く事は避けられそうもない状況下では1万4千人の労働者の処遇も頭痛の種。経費増大を防ぐ意味でも集団休暇や解雇を含む対策を早期に決めなくてはならず、工事関係者や訪問者向けのホテル建設なども進んでいるアウタミラの町も今後の成り行きに目が離せない。
 シングー川流域では、エレトロノルテが水力発電所建設を試みた1975年以来、ダム建設で居住区や生活域を失う先住民や環境学者などの建設反対運動が続いており、エレトロノルテが規模を縮小した建設案を提示した2000年以降も、一般向けの説明会に乗り込んだ先住民がエ社の技師の腕に切りつけるといった事件も起きている。
 同発電所はブラジルのエネルギー政策の要の一つで15年発電開始、19年完成と言われてきたが、工事の遅れを招く連邦地裁判決や、内政干渉との批判も出た米州機構人権委員会の工事中止要請なども含め、世界一問題が起きた施設というタイトル獲得は確実なようだ。