ニッケイ新聞 2012年8月28日付け
SBT局が5月に放送を開始した小学校を舞台にした子供向けノヴェーラ「カロッセル(Carrossel)」が大ヒット中だが、成功の秘訣は日系人を含む多様な人種の生徒を集めた番組の持つ教育的な内容にあると26日付アゴーラ紙が報じている。
「カロッセル」は、午後8時30分(10月4日までは政見放送があるため午後7時50分)から放送されている番組だ。偏見やいじめなどを扱ったこのノヴェーラは厳密に言えばリメイクで、オリジナルは1989年にメキシコで放送された。SBTでも91〜92年にポルトガル語吹き替えで放送し、大人気を博していた。
だが、オリジナル版を見て育ち、現在6歳の女の子の母親となったある主婦は、「オリジナル版には見るべきものが大してなかったけど、今回のリメイクは子供たちが直面している現実により近くなっている」と賛辞を送る。
「カロッセル」は小学校「エスコーラ・ムンジアル(国際学校)」を舞台に、若くて美人な女性教師エレーナ先生と、6歳から12歳の生徒16人(男子9人女子7人)を軸に展開される。生徒たちは、白人、黒人、褐色人、日系人、米国からの転校生など、多様な存在で、貧富の差のほか、信心深いユダヤ教徒の少年や太った少女、眼鏡をかけた少女など様々な特徴を持っている。
その中でも話の中心となるのは、医者の娘でクラスのリーダー格のマリア・ジョアキーナと、彼女に恋焦がれる黒人少年のシリーロだ。裕福な家系であることを鼻にかけ、あからさまに人種差別的な態度をとるジョアキーナの冷たい態度にも関わらず、貧乏ながら心優しく、自分を嫌う人さえ愛そうとするシリーロは視聴者からの共感が高い。7歳の娘を持つある黒人の女性秘書は「うちの娘も学校で人種的偏見を体験していたけど、シリーロを見て克服したのよ」と語っている。
心理学者のアラセリ・アウビーノさんは、「カロッセル」の成功を「子供たちが登場人物に自分をあてはめて共感しながら見ているから」と分析する。また、特別診療所の精神科医マルセラ・アルメイダさんは、「このノヴェーラは、子供たちが現実社会を把握し、他の子供たちが抱えている問題に目を向けさせるのに役立っている」との評価を与えている。
なお、同ノヴェーラではコキモト・ミシマという名の日系人生徒も登場。頭に漢字で「平和」と書いたはちまきをまき、いたずら好きなコキモトは、空手が得意で、男子のリーダー格の少年パウロの傍らにいて用心棒的存在を演じている。