ニッケイ新聞 2012年8月30日付け
日々の雑事にかまけ、気がつくと8月末。ブラジルに腰を落ち着けつつも、年の感覚はまだ日本。新学期も始まった。退陣しそうにない炎帝の圧政に息も絶え絶えながら、秋の訪れを待つ人々の声を聞くにつけ、1年の短さを感じる。気を取り直して8月の言葉から▼現在、ブラジル映画「汚れた心」(Coracoes Sujos)が公開中だ。ヴィセンチ・アモリン監督(45)は6月に先行公開された日本で、改めて日伯の文化の違いを強く感じたという。だからこそ—「互いに惹き合い、扶助できる関係がある」▼福井からの慶祝団を迎え入植50周年を祝ったピニャール移住地に現地入植した山下治さん(76、福井)は、格闘の末、ぶどう栽培で名を成した。人柄を忍ばせる穏やかな口ぶりで「一からーというより0からだった。叶いつつある理想の村作りは、次世代に期待」▼来年の「レジストロ地方植民地100周年」の一環で、セッテ・バーラス会館の建設に携わる遠藤寅重会長(76、福島)。同地に住んで半世紀。ブラジル人たちと共に活動、〃融合の場〃として、かつてあった会館を建て直すことになった。「我々への評価は先人のおかげ。その恩返しのつもり。来年の落成式が楽しみ」▼初の「世界若者ウチナーンチュ大会」がサンパウロ市であった。資金面での問題もあったが、参加者らの笑顔がはじけた。「共通語をウチナーグチに」との提案も。サポート役の宮里大八さん(38、沖縄)は「南米の若者はルーツを確認し、沖縄からの参加者も何らかの気付きを得た」。気になる言葉を拾っていけば月の半ばにも至らず。成程1年も早いはずだ。(剛)