ニッケイ新聞 2012年9月1日付け
【既報関連】メンサロン事件の裁判も17日目を迎えた8月30日、アイレス・ブリット最高裁長官が、下院の票の取りまとめと公金横領に関する部分の投票を行い、下院議員のジョアン・パウロ・クーニャ被告も三つの罪状で有罪と決まったと8月31日付伯字紙が報じた。37人の被告の中で唯一、市長選に出馬していたクーニャ被告は、大サンパウロ市圏オザスコ市の市長選を断念した。
下院の票の取りまとめとブラジル銀行、ヴィザネット基金を巡る公金横領に関する裁判はメンサロン事件のミニ裁判第1弾で、クーニャ被告が収賄と公金横領で有罪との判断は8月29日に下っていたが、ブリット長官の投票で資金洗浄でも有罪である事が確定した。
ミニ裁判第1号は、2003〜05年の下院議長だったクーニャ被告が企業家マルコス・ヴァレリオ被告から金を受け取り、ヴァレリオ被告らの会社と下院の契約締結に便宜を図ったとされる件に関するものだ。
ヴァレリオ被告の広告会社はクーニャ被告への5万レアルと引き換えに1千万レアルの契約を得ており、同被告や共同経営者のクリスチアノ・パス被告、ラモン・オレルバッシ被告の3人は、実態のない仕事にも不正な金を受け取った他、後の法改正でブラジル銀行に返却すべき金も返さなくてよくなるなどの恩恵を受けており、贈賄と公金横領で断罪された。ブラジル銀行元理事のエンリッケ・ピゾラト被告も収賄と資金洗浄、公金横領で有罪となった。
横領された金は労働者党(PT)政権の上下両院での票の取りまとめ用の賄賂にもなり、議会対策に協力した議員には毎月(MENSAL)3万レアルが払われた。
クーニャ被告は、ヴェレリオ被告らからの賄賂の受け取り(収賄)と公金横領の他、銀行からの賄賂引き出しを妻に命じており、金の出所を隠そうとしたとして資金洗浄の罪にも問われた。
クーニャ被告が下議を辞任するか否かは明らかではないが、オザスコ市では、判決後にPT支部の役員と協議し、副市長候補だったジョルジ・ラパス候補に市長候補の座を明け渡した。ラパス氏はエミディオ・デ・ソウザ現市長が推す人物で、副市長候補は市議会リーダーのヴァウミル・プラシデリ市議が務める。
クーニャ被告の市長選出馬は、PT政権が任命した判事達がPT寄りの判決を下すであろうとの期待と、多少の金の動きは選挙用の裏帳簿で通ったブラジルの政界事情を反映したもの。メンサロン事件でも、被告弁護人が裏帳簿の一言で断罪を免れようとしてきたが、今回のミニ裁判で贈収賄での有罪判決が出た事は司法判断の基準が変わってきた事の表れだ。
ブラジル銀行絡みで300万レ、ヴィザネット基金絡みで7400万レなどの大金が動いたメンサロン事件では、30日から3200万レが動いたルーラル(農村)銀行の元役員を裁くミニ裁判第2弾が始まっている。