ニッケイ新聞 2012年9月1日付け
ブラジル別院南米本願寺(東本願寺、菊池顕正輪番)は8月27日、ホトトギス同人会長で元NHK俳壇選者でもある安原葉さん(本名・晃)を迎え、『俳句会』を開催し、38人の俳句愛好者らが訪れた。
25、26日に真宗大谷派南米開教区が開催した「讃仰の集い」に同派宗務総長として出席するため来伯。滞伯最終日だったが、菊池輪番が「滅多に会えない安原先生がお出でになるご縁を大切にしたい」と考え、俳句愛好家の東博行・マナウス嘱託開教使と共に同会を企画した。
家族が俳句を愛好していたことから、自身も1955年から俳句を嗜む。高浜虚子や星野立子さんらに師事し、99年には、会員約千人で国会議員や大学教授等地方の名士も所属するという同同人会長に就任している。
会は「冬」を季題に3句投句。参加者らは辞書を引きながら頭をひねり作句し、続いて互いの句を回し読みしながら一人3句ずつ互選を行なった。披講は香山和栄、真藤浩子、吉田しのぶさんが行い、星野瞳、安原さんによる選句も発表された。
安原さんは予選を通過した句なども公表しながら、「季語は厳密には一つだが、二つ入ることもある。でも同じ重さだと駄目」「切れ字を活用すればいい」など様々な助言を行なった。特に強調したのは「出来るだけ5・7・5の定型に収める」こと。「これは日本語が最も美しく響く原型で、『ふるさと』など心に残るリズムは全て5・7・5を踏んでいる」と話した。
最後に「俳句は正に如来。真実の世界から来てくださるのを、こちらが謙虚に受け止めるもの」など、俳句と宗教が相通ずるものであることも説明。気さくな様子でユーモアを交えながら語る安原さんに来場者は大喜び、誰もが有意義な午後のひと時を過ごせたようだ。
【安原葉 選】
◎特選=ゆくりなく師と相まみえ冬ぬくし(児玉和代)
◎寒紅少し立子句碑訪ふ喜びに(小西成子)
◎遠来の師との一会や冬うらら(武田知子)
◎にぎり合ふ手のぬくもりも冬ぬくし(大垣篤子)
◎冬ぬくし安原葉師暑からん(前田昌弘)
◎一堂に旧知の友や冬ぬくし(山本紀未)
◎鐘冴ゆる立子句碑立つ移民寺(西谷律子)
◎湯豆腐や亡夫の笑顔が目に浮ぶ(長田如惠)
◎ハルとナツ思い起こすや枯野星(吉田しのぶ)
◎冬支度一枚あれば足る国に(山本紀未)
◎かすかなる四季のある国春を待つ(小西成子)
【星野瞳 選】
◎特選=遥か来てホ句の絆か冬ぬくし(山本紀未)
◎風ゆるみ真青のゆるみ冬日差し(児玉和代)
◎冬山の彼方此方の日向かな(東比呂)
◎被爆せし枷引きずりて冬寒し(武田知子)
◎おめもじもお別れも今日冬日影(小斎棹子)
◎ゆくりなく師と相まみえ冬ぬくし(児玉和代)
◎アマゾンの友に大根さげて行く(新井知里)
◎涅槃浄土彼方にありや寒夕焼(吉田しのぶ)
◎仏縁に国境は無く冬の句座(濱田一穴)
◎おん僧の雪白みせし肌の色(佐藤美恵子)
◎雑炊や糟糠の妻口重し(角田梢)