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100品目で輸入関税引上げ=10月には品目を倍に=メルコスル外の製品に適用=保護主義との批判免れず

ニッケイ新聞 2012年9月6日付け

 ジウマ政権は資本財や石油化学製品など100品目の輸入関税を引上げることを4日に発表した、と5日付伯字紙が報じた。国内の経済回復が思うように進まない中、工業生産を加速させるための試みだが、ブラジルが保護主義色を強める事を懸念する声も上がっている。

 4日に発表された輸入関税引上げは、資本財や金属、石油化学製品、医薬品など100品目が対象で、南米南部市場(メルコスル)加盟国の了承後に同経済圏以外の国々から輸入する品に適用される。対象品目は10月までに200に拡大される予定だ。
 2011年後半から表面化した経済減速化が長引き、2012年の経済成長率は1・5%程度との見方が強まる中、国内経済加速化への新たな手段として選ばれたのは、近年急増している工業製品の輸入を抑制するという方法だった。
 景気の回復の遅れと国内消費と工業生産促進のための減免税処置が重なり、税収の落ち込みも続くブラジルだが、所得の向上や為替の不均衡などで拡大した外国製品輸入は、経済減速後も大きな落ち込みを示していない。
 この事は工業を中心とした国内産業の苦戦を意味し、外国投資などへの金融取引税引上げ、中銀による為替への介入、白物家電や自動車への工業製品税(IPI)引下げなどの対策が矢継ぎ早に採られてきたが、6月の工業生産は前月比で0・3%増に止まるなど、景気回復のペースは政府の期待を下回っている。
 工業界の現状を変えるには、生産コストの引下げやインフラ整備などが不可欠で、電力料金引下げや為替のコントロールなどの取組みも進んではいるが、国内での減免税などだけでは期待通りの結果が出ず、輸入関税の引上げに至った。
 関税引上げの対象品目には、ジャガイモや紙、タイヤ、家具、ガラスといった生活に密着したものもあり、機械設備や工業用の原材料などの実質値上げに伴う製品値上げも完全回避は難しい。
 ギド・マンテガ財相は4日、便乗値上げが起きた場合は関税を元の水準にひき戻すと発言しているが、12〜18%だった関税を25%に引上げた後の差額が製品価格に上乗せされればインフレ圧力も強くなる。
 フェルナンド・ピメンテル商工開発相は世界貿易機関(WTO)の許容範囲内というが、市場獲得のために国内よりも廉価で売り込むダンピング防止のために課税済みの品目は、関税引上げで2重の保護策が採られるなど、保護主義色が強まった事は国外への印象を悪くしかねない。
 関税引上げは工業界の問題解決には繋がらないし、自分で自分の首を絞める行為と指摘する識者もいる中、便乗値上げをいかにして防止し、国内産業を喚起するか。穀物価格の高騰に輸入品値上がりなど、インフレ圧力も強まる中、ジウマ政権の正念場はまだ続く。