ニッケイ新聞 2012年9月12日付け
昨今停滞ムードが漂うブラジル経済だが、化粧品・美容業界は群を抜く急成長を遂げていると、11日のグローボTVニュース「ボンジーア・ブラジル」などが報じている。ブラジルは現在でも世界で3番目に多く化粧品を消費する国として、世界の化粧品ブランドから注目を集めているが、さらなる成長が見込めそうだ。
米国の化粧品の製造販売会社「エイボン・プロダクツ」は近年、サンパウロ州カブレウーバ市に、1億5千万ドルを投資して世界最大規模の配送センターを建設した。
同社はこの数年先で特に顔用のクリームと化粧品類の販売成長を見込んでおり、年間で300種を開発している。
エイボン・ド・ブラジルのマーケティング担当役員リカルド・パトロシニオ氏は、「口紅やマスカラはすでに一般的で、アイシャドウやチーク(頬紅)などはあまり浸透していないが、これから使われるようになると思う」と、さらなる商品バラエティの拡大に期待する。
超保湿成分の入った口紅、ナノテクノロジーを使ったクリーム。サンパウロ市で行われているビューティーフェアに携わるセーザル・ツクダ氏によれば、肌を手入れする商品も人気が高い。
「現代の女性たちは20年前の世代に比べて、肌を手入れする商品を購入している。次の世代はさらに関心が高い」
同番組によれば、昨年の衛生用品、化粧品、香水の販売額は730億レアル以上に達しており、業界の98%が中小企業。ベンチャー企業家たちにとってはまだまだ魅力的な市場といえる。
5月17日付のフォーリャ紙ウェブ版によれば、IBGEのデータでは昨年3月、小売業界全体では前年同期比12・5%成長だったが、品目別に見ると10種のうち6種がマイナス成長と足踏み。プラス成長の4種の中でも医薬品、化粧品、香水類は群を抜いた2・3%の伸びを記録している。
業界が成長を続ける要因として、米国のコンサルタント会社「マッキンゼー・アンド・カンパニー」のファビオ・ストゥル氏は、ブラジル人がもともと美容用品の購入を惜しまない国民性を持っていること、急激なレアル高で特に中間層の消費が増えてきていること、2020年にブラジルが「人口ボーナス期」に入る3点を挙げた。
人口ボーナス期とは、国の生産年齢人口(15〜64歳)を従属人口(14歳以下と65歳以上)を割って算出し、指数が2を超える時期のことで、その時期に経済成長が加速するといわれる。『日経ヴェリタス誌』84号によれば、ブラジルは2010年時点で2・09、2020年には2・37とピークを迎える。この予測が本当なら、10年近く成長が見込めそうだ。
ただし、その分業界内の競争は激しく、新商品の開発はとどまるところを知らない。4月20日配信のバンジ・ニュースのサイトによれば、肌を若返らせるアンチ・エイジング(老化防止)の注射が今年にも登場するとかで、美を追求するブラジル人の好奇心はこれからも刺激され続けそうだ。