ニッケイ新聞 2012年9月12日付け
ブラジル日本商工会議所の企画戦略委員会(澤田吉啓委員長)と総務委員会(小西輝久副委員長)が共催した2012年下期「業種別部会長シンポジウム」が、先月21日午後、サンパウロ市内ホテルで開催された。昨年来のブラジル経済の動向を特徴付ける成長予想の下方修正の様子が、11の部会ごとに説明され、参加した約150人が熱心に聞き入った。
冒頭、「下方修正が続き、決して芳しくない状況。ビジネス展開をする上で色々ヒントがあると思う」との近藤正樹会頭の挨拶から始まり、在伯日本大使館の木下義貴政務班長が「ジウマ政権と今後の政治動向」と題して基調講演した。講評した在聖総領事館の小林雅彦首席領事は、外務省を通じてこの内容を関係当局に伝達しているとし、「ブラジルコストや汚職などの問題はあるが、カルドーゾ政権後の安定した経済は評価すべきもの。成長のスタートに立つ土台がある」と前向きな見方で総括した。
政策効果で下期は回復か
金融部会の遠藤秀憲部会長は2012年上期の回顧として、「政策効果が見えない中、悪材料てんこもりで経済が停滞」とまとめた。要因として金利の引き下げやレアル安誘導の効果が見えなかったこと、南部の干ばつによる農業生産の減少など、ミクロ的、マクロ的両要因を挙げた。
下期は政策効果や一過性要因の解消で回復を見込むが、ボラティリティ(株式などの価格の変動率・変動性)は高いとみられる。保険業界は市場の拡大傾向が継続する見込みだが、再保険規制の影響は引き続き懸念されるとした。
車国内販売、過去最高か
自動車部会の久保晶部会長代理は四輪車の動向に関し、雇用確保とメーカーの一部負担を条件とした今年5月のIPI(工業製品)税引き下げを主な変化として挙げた。この効果で6月の販売は急回復し、一昨年12月以来の単月歴代2位の販売を記録。今年の国内の販売台数は、昨年の363・3万台を上回る過去最高の377万台と予測されている。
一方で生産台数はほぼ前年並み。ブラジル・メキシコ間の自動車FTA(自由貿易協定)改定や輸入車へのIPI増税で輸入増の傾向には歯止めがかかっている状況だ。
造船界への進出が本格化
機械金属部会の西岡信之部長は上期について、欧州財政危機やレアル高騰などの影響で、自動車等の一般消費者向け製品の販売が低迷し、それに伴いこれらへの部品・材料供給が低迷または減少したと報告した。
一方ペトロブラスの大規模投資、社会インフラ投資が本格化しつつあり、一部、大型設備投資案件が動き始めている。特に造船界への日本企業進出は本格化しつつあるという。
下期は、政府が金利引下げやレアル安への誘導を行い国内産業の保護を強めているが、世界的な景気減速が内需に負の影響を与える可能性もあり、内需の大幅な伸びは期待できないと締めくくった。
通信インフラの需要増?
電気電子部会の篠原一宇部会長は上期について、「対前年で成長した企業は多いが、景気低迷で消費財や設備投資が減少している」とまとめた。減税対策商品を中心に市場は伸びたが、中国製など低価格輸入品も急増し、一部アイテムは国内生産の維持が困難になっている。上期の大型白物家電(冷蔵庫、洗濯機、ガスレンジ)販売は前年比110〜113%でそれぞれ微増した。
下期はW杯と五輪に向けたインフラ投資で各社は事業拡大を期待し、ブロードバンド推進計画など通信インフラへの需要増に期待できると予想した。(つづく)
写真=約5時間にわたるシンポジウムに150人が聞き入った