ニッケイ新聞 2012年9月13日付け
貿易は上期足踏み状態
昨年通期の前年対比で輸出、輸入、貿易収支、対内直投、対内貿易ともに軒並み増加し、特に貿易黒字額は298億ドルと48%増で過去最高の勢いで好調を記録したが、今年上期は前年同期と対比して足踏み状態。貿易黒字額も71億ドルと45%減を記録した。
貿易部会の伊吹洋二部会長は下期について、今年通期の貿易黒字額は前年比40%減の180億ドルとなるとの中銀の見通しを発表。「金利の引き下げと減税、レアル安の影響がどこまで出るかが鍵」と締めくくった。
景気減速で貨物が鈍化
運輸サービス部会の森田透部会長は、物流業界は急速な景気減速で貨物の動きが鈍化し、上期は空港・港ともインフラは改善しなかったものの、W杯や五輪に向け整備が始まるとの見方を示した。
機内物流、機工、整備業界は国内産業優遇政策で伸びが期待され、海運業界はコンテナ船の輸出量がアジア向けを中心に前年同期比で7%増、輸入は4%増。旅行・ホテル業界は、上期は前年同期比で客室稼働率が3・4%減少したが、下期は政府主導の接客研修に取り組んでおり、来伯客の増加が予想される。通信・IT業界は携帯電話の加入者数の増加で好調が見込まれるとした。
繊維「我慢と忍耐続く」
繊維部会の金屋悦二部会長は「昨年は南北戦争以降の原綿の価格急騰、レアル安のダブルパンチで、部会各社(6社)は創業以来の厳しい決算だった」と明かした。
上期末にようやく収束が見えかけたものの、下期も干ばつと収穫前の長雨で減収が予想され、「我慢と忍耐が続く」との見方を示した。現状の相場では綿作の利益は薄く、来期は穀物への転作が懸念されるという。
全国的に好調な建設
建設不動産部会の三上悟部会長は、欧州危機で集合住宅の着工件数は下降したものの、今年上期(1〜4月)の建設業界は全国的には好調だったと報告した。
建設の活況度を示すセメント消費量は年々確実に伸び、2010年同期と比較すると今年上期は全伯で120・03%の成長を記録した。ただし建設労働者数は2010年(1〜4月)をピークに減少傾向がみられ、「労働市場は日本と同じレベルになりつつある」との見解を加えた。
労働者の離職率を抑えるべく、日系人の専門職人材育成が課題と締めくくった。
食品輸出は競争激化必至
食品部会の天野一郎部会長は、上期の国内市場を「全般的に良好」と総括した。近年の世界的な原料高騰は欧州の通貨危機で反転するも、依然として高水準。国内も原料高が続く見込みだという。下期は国内需要の大きな落ち込みはないとみられるが、昨年と比較すると厳しい状況が予想されるとした。
輸出については為替相場の反転が追い風となるものの、新興輸出国との競争激化は避けられず、ブラジルコストの克服が課題となる。ブランド力の強化や販売戦略の再策定、コストダウンの継続的取り組みが必要と締めくくった。(おわり)