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サンパウロ州=06年並みの市街戦状態か=軍警とPCCが殺し合い=秘密裁判後に9人殺害=アウキミンは擁護するも

ニッケイ新聞 2012年9月14日付け

 サンパウロ州軍警特別機動隊(ROTA)は、州都第一コマンド(PCC)関係の犯罪者たちが行っていたグループ内裁判の現場に侵入し、関係した9人を殺害し、8人を逮捕したが、PCCからの報復の恐れや誤認殺害もあったことから問題視する声も聞かれている。12〜13日付伯字紙が報じている。リオでは収まったかに見えた暴力には暴力を——権力対ギャングの抗争だが、サンパウロ州では日に日に激しさを増している。

 平和部隊(UPPs)を設置した2008年以降、リオでの警察とギャングの抗争は沈静化へ向かいつつあり、その分、目立つようになってきたのはサンパウロ州での軍警対PCCの抗争だ。
 サンパウロ州の同機動隊とPCCは06年1〜7月に抗争を行い、PCCが67人、ROTAが47人の死者を出す内戦状態となり、世界的ニュースになったことは記憶に新しい。その後、鎮静状態を保っていたが今年半ばから活発化し、7月までに軍警が殺害した人の数は61人を数え、昨年同月の29人から2倍以上の増加となっている。最悪だった06年より7人少ないだけだ。
 発端は今年の5月28日、サンパウロ市東部のペーニャでROTAがPCCと銃撃戦を行い5人のPCC構成員を射殺した上にアイルトン・セナ高速道近くで逮捕した構成員を拷問死させたこと。これは6〜7月にサンパウロ市や大サンパウロ市圏で多発した軍警に対する暗殺の原因になったと言われている。
 この11日夕方頃にも、軍警とPCCとの銃撃戦がサンパウロ州ヴァルゼア・パウリスタで起きた。PCC関係者が秘密裁判を行い、21歳の男性が、PCCの構成員と思しき男性の妹(12)を強姦した容疑を裁いていた。
 40人のROTAは裁判がひと段落したところを狙って、関係者が3台の車で立ち去ろうとした後を尾行し銃撃戦に発展した。その結果、4人が死亡、4人が逮捕された。ROTAは裁判現場にも侵入し、5人を殺害、4人逮捕した。その死亡者の中には、裁判の被告の男性も含まれていた。
 この軍警の行為に対し、アウキミンサンパウロ州知事は12日、「殺したのは軍警に対して銃で反抗した人に対してだけであり、そうでない人は殺さずに逮捕したではないか」と軍警を擁護した。
 だが、ROTAが裁判の被告も殺害してしまったことが問題視された。当初被告は、犯罪者たちによって処刑されたと見られていたが、強姦の被害者と見られていた少女が、裁判で強姦そのものを否定したことで無罪になっていたことを証言。ROTAの報告書で被告男性が警官によって殺されたことが明らかとなった。被告の男性に犯罪歴はなかった。
 12日付けエスタード紙でブルノ・パエス・マンソ氏は「昨年8月から警察官18人が死んだ。5月の事件以来、PCCとの警察の抗争は激しさを増すばかり。警察が殺せば、仕返しに走り、暴力の螺旋上昇が起きている」と警告を発した。