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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年9月14日付け

 それが鞍馬天狗であれ月光仮面であれ、〃正義の味方〃に憧れた幼年期を送った人は多い。正義は絶対的に正しいというイメージだったが、大人になるに従い、それぞれの立場に正義があると分かり、むしろ「なにが正義か」と考え込むようになった▼「正義は行われる」。リビアで自国大使を殺されたオバマ米国大統領が発したその言葉を聞き、「また戦争か」と思ったのはコラム子だけではないだろう。「魔の9月」。大統領選をあと2カ月後に控えた微妙な時期に大使殺害…。しかも政敵共和党のロムニー候補は保守強硬で知られる。武力行使に繋がりやすい局面だ▼正義には、どこか「力で押付ける倫理」という雰囲気が漂う。「弱い正義」は様にならない。「目には目を、歯には歯を」という報復的正義の論理は今も健在だ▼当国のニュースでも殺人事件の被害者家族が「ジュスチッサを!」と叫ぶ場合、官憲がダメなら「自らの手で」という意味合いが強い。当地では〃正義のリンチ殺人〃、いわゆる「Justiceiro」がかなり多い▼10年間で50万人が殺人事件の被害(08年1月29日付けエスタード紙)になり、その殺人事件の2%も解決されていない(07年11月2日付け同紙)となれば、「自分の手で」となるのも無理はない▼ブラジル最高裁の前には、先入観に捉われないことを象徴して目隠しをした女神が長剣を持つ有名な坐像モニュメントがある。司法の象徴だ。判決には強制力が伴わないと意味がないことがよく表現されている。〃軍隊〃すら持たない東洋の平和な国には、世界の弱肉強食な現実は想像すら出来ないかもしれない。(深)