ニッケイ新聞 2012年9月15日付け
ブラジル政府は13日、新たな景気刺激対策として、新たに25業種の企業に対し、国立社会保険院(INSS)へ納付する年金雇用主負担分を2013年から免除し、代わりに売上げの1〜2%を支払うようにすると発表した。14付伯字紙が報じている。同日、ジウマ大統領が以前から「通貨の津波」と批難していた米国金融緩和の追加策が発表されており、当然起こりうるレアル高による輸出部門の損害、それによる製造業での雇用削減への予防的な対応ともいわれている。
今回追加したのは、パンや医薬品など20種の製造業、コンピューター・サポート業など2種のサービス業、航空輸送業など3種の輸送業の計25業種で、13年からは、INSSに納付する年金雇用主負担分である給与総額の20%を免除する。
政府は既に、機械工業を中心とした11種の製造業とホテル業などのサービス業4種に対し、8月から同様の対策を行っていた。この恩恵を受ける業種は計40となり、全正規雇用の13%、正規雇用者の給与総額の16%に相当する。中でも製造業の輸出部門の59%をカバーすることから、「通貨の津波」による輸出企業の損害を減らす目的があると見られている。
対象となる全40業種がINSSに納付している金額は215億7千レアルだが、13年以降に支払う額は87億4千レアルと、128億レアルも免除される。政府はこの免除額の合計を、2013〜16年の4年間で600億レアルになると見込んでいる。
その代わり、対象となった業種は、製造業が売上げの1%、サービス業と輸送業は2%を納付することになる。それでも、この対策により、雇用主負担分は大幅に縮小するとみられる。
この免除により企業側に残った資金を、政府は雇用や役職の増大、投資の活性化、生産ならびに生産性の促進、輸出量の増加に役立てることを期待している。
この対策を受け、ブラジル航空協会は新対策の1年目で3億レアルのコストを削減できると発表し、コンピューター業界は、この業種での雇用が活性化されるであろうと好意的に評価した。
だが、その一方で「この対策は、同業種内での不公平を生みかねない」と指摘する声もある。自動車製造業協会のジョゼ・ルイス・ディアス・フェルナンデス会長は「この対策では、生産自動化を進め、雇用数を絞った企業が恩恵を受けない」と指摘した。サンパウロ州工業連盟(Fiesp)のパウロ・スカフ会長も「いいアイデアだが、もう少し早く導入していたら今ごろはもっと建設的な対策になっていたのでは」と語っている。
対象業種の企業側の意見で一致しているのは、この対策により「非常時の雇用削減をするのが難しくなった」ということだが、今対策の主眼はまさにそこにあるようだ。