ニッケイ新聞 2012年9月15日付け
サンパウロ市市長選まで3週間と迫る中、現在トップの支持率35%を獲得しているセルソ・ルッソマノ候補が所属するPRB(ブラジル共和党)を、カトリック教会が痛烈に批判していると14日付エスタード、フォーリャ両紙が報じた。
前回までの選挙では〃泡沫〃と見られていた同候補が、本命セーラ候補が抑えて予想外の大躍進を続けており、その陰にある支持勢力についての様々な推測が流れていた。今回カトリック教会が批判を強めたことで、その背景が明らかになってきたようだ。
サンパウロ市最大のカトリック組織、サンパウロ大司教区のドン・オディロ・シェレー大司教が13日に公表した文書には「同候補の勝利によって民主主義が脅威に晒される」ことを示唆する内容が含まれており、共和党と新教・福音派ペンテコステ教会の一大宗派ウニベルサル(Igreja Universal do Reino de Deus)については「疑いようのない関係がある」との記述があった。
全伯に610万人の信者を持つウニベルサルは77年の創立以来、勢力を広げて牧師を政治家にし、独自の新聞、ラジオ局、テレビ(Record)を持つに至った。カトリックに代表される既成勢力を攻撃する方向性を強く持ち、自前メディアを通してグローボ局やフォーリャ紙などを激しく攻撃してきた。
大司教は今回、ルッソマノの選挙キャンペーン主導者で、ウニベルサルの牧師マルコス・ペレイラPRB党首が昨年5月に自身のブログで公開し、4日前にツイッターを通じて出回り始めた記事を指し、「選挙に不調和をもたらし、カトリック教会に関する軽率な批判をした」と非難した。
その記事とは、カトリック教会が政治に介入しており、同性愛者への否定的価値観をなくすための公立学校向けの教材「キット・ゲイ」の配布に間接的に関わっていると指摘したものだ。そこには「どのようにしてゲイであることを選択するのかを教師が教えるような、世界の終わりのような日々を生きなければならないのだ」との内容が掲載されていたという。
「キット・ゲイ」はフェルナンド・ハダジ候補が教育相を務めていた時期に作られたもので、福音派教会から否定的な反応があったために、ジウマ大統領が配布を停止するに至っている。
また、マルコス氏は「ルッソマノ候補がカトリック教徒であり、当選しても(カトリックにとって)何もリスクはない」としている。
たとえルッソマノ候補本人はカトリック教徒でも、彼が台頭した背景には新教勢力の強い支持が働いており、宗教的な地殻変動が影響しているようだ。14日エスタード紙によれば、今月10〜12日に世論調査・統計機関(Ibope)が1千人を対象に行った調査では35%を獲得し、ジョゼ・セーラ候補(PSDB)は19%、フェルナンド・ハダジ候補(PT)は15%となっている。