ニッケイ新聞 2012年9月15日付け
「21世紀が平和でありますように」——ラーモス移住地の平和の鐘公園建設に尽力した小川和己さん(長崎、享年83)が4日夜に他界した。同地さくら祭り直後の3日、本紙の取材に答え、小川さんは冒頭のような最後のメッセージを残していた。
ラーモス移住地原爆被爆者子孫の会を陣頭指揮し、平和運動をしていた小川さんに、思いも掛けない長崎の鐘が贈られたのが14年前。日本からの支援にも応えられるよう、元クリチーバ市環境局長の中村矗(ひとし)さんらと協力し、平和の鐘公園の建設に取り組んできた。
10年5月には念願の平和資料館の落成式を開催した。さらに池や休憩所も作りたいと話す小川さんは「心身ともに癒される場所を」と更なる公園拡張計画の夢を切々と語っていた。
「世界にメッセージを発信できる平和の鐘公園にしたい」。ひたすらに平和を願い、毎日自宅近く資料館に足を運んでは来場者を出迎えていた。
公園内にそびえる鶴をイメージした真っ白の平和のモニュメントは、夜もきれいにライトアップされ、来場者の目を楽しませる。そのモニュメントの前では、祈りを捧げるブラジル人観光客も絶えないそうだ。
小川さんが残した平和祈念の思いは同地を訪れる人々に託され、全伯に伝わっていく事だろう。(長村裕佳子クリチーバ通信員)