サンパウロ市=10万人に補助で会計圧迫=ファベーラ立ち退き者に=「解決になっていない」
ニッケイ新聞 2012年9月18日付け
火災や治安など保安関連問題により、市の命令でファベーラから立ち退いた人々などに対し、サンパウロ市役所が緊急措置として生活補助金を支給する施策の対象者が、2万7千家族、10万人以上に上ると16日付フォーリャ紙が報じた。
月曜時点でサンパウロ市では61日間も降雨がなく、乾燥が続く。17日早朝、サンパウロ市セントロのファベーラ・ド・モイーニョでは約90軒の家屋が延焼し、約300人が避難した。昨年12月に火災が起きたばかりの場所で、再び焼け出された。テレビなどの取材の答え、住民は「ほかに行く場所はない。同じ所にまた家を建てるしかない」などと答えて、堂々巡りの状況にあることを示唆した。
消防署の情報によれば、ファベーラの火災は05年からでは約900件にのぼる。今年に入ってからだけで32件も起きている。
ファベーラから立ち退きを余儀なくされた家族は、政府の補助金による公営住宅に移るまで生活補助を受けられることになっており、その権利は憲法が保障している。
しかし、公営住宅の建設が、立ち退いた人々の数に追いついていないことが問題だ。ファベーラから立ち退いたジェロンシオ・エンリケ・ネットさん(50)一家は、サンパウロ市役所から月500レアルの生活補助を受けられるはずだが、09年からずっと受給を待っている状態だ。
この生活補助プログラムの受給対象となるのは、10年には1万1千人だったが、現在は2万1千人と倍増する勢いで、別の施策「パルセリーア・ソシアル」の受給対象6千家族と合わせると、10万人以上が恩恵を受けることになる。
しかし、約束された補助が受給できないジェロンシオさんのようなケースは珍しくないどころか、むしろ増えている。原因として、ファベーラが連続して火事に見舞われているからと市役所はみている。
居住区域などによって月300〜500レアルの生活補助が受けられるはずだが、そのだけでは子供を抱えた一家の生活費を賄いきれないのも現実だ。それでも市役所とすれば、合計年間1億レアルもの支出が見込まれ会計を圧迫している。
建築家のカズオ・ナカノ氏は「05〜11年の間に建てられた公営住宅の数は、立ち退きを余儀なくされた2万人に対してほんのわずか。これでは解決になっていない」と指摘した。
なお、「退去した人々は、結局元に住んでいた場所に戻っている」と指摘する声もある。フォーリャ紙記者が、カンポ・ベロ地区のファベーラ「ピオーリョ」で、火事で住居を失った人が軍警などに止められることなく、同じ場所に白昼堂々と家を建て直している現場を目の当たりにしている。
市役所は、「補助金は家賃に当てられるべきもので、家の建て直しに当てることは認めていない」としているが、些細な金額の補助金では、立ち退いた人々の生活が立ち行かないのが現状のようだ。