ニッケイ新聞 2012年9月21日付け
自動車製造への投資が5年後には需要超えか—。ブラジル内の各自動車メーカーの発表をもとにしたコンサルタント会社「ローランド・ベルゲル」の調べによれば、もし計画段階のものも含めた自動車製造への投資が全て実行された場合、2017年には生産台数が需要を超える見込みだと20日エスタード紙が報じた。
昨今、当地に進出する各自動車メーカーによる国内での新工場建設や既存の工場拡大への投資が白熱しているが、同社によれば2017年までに自家用車や商業用軽自動車の生産台数が約60%増えるという見通しだ。
同社によれば、新たな投資により国内での自動車生産台数は現在の年間480万台から、5年後には680万台にまで増え、同時に180万台の需要超過を引き起こす可能性があるという。同社役員のスティーブン・キーズ氏は「この状況はメーカーにとって良くない。価格競争や収益性の低下につながる」と懸念を示している。
なかでも、アジア系の自動車メーカーの生産台数は、今年の28万7千台から5年後には83万台にまで増えると見込まれており、この中には今年8月にトヨタ自動車がソロカバに開設した工場や、韓国のヒュンダイがピラシカーバに建設した工場の生産台数も含まれている。
2017年は国内で540万台の生産が計画されているが、同社は、経済の動向次第で370〜520万台に減らす必要があるとみており、そうなれば20万〜180万台もの生産超過を生むことになる。
また同社はトラックやバスの生産でも同じことが起こるとみており、企業の中では収益の悪化を避けるために新たな投資を避ける動きがある。ドイツの大型トラック、バスメーカー「MAN」社は、今年の売り上げ低下をうけ、リオの新工場設計画を見送っている。
Anfavea(全国自動車工業協会)によれば、昨年国内では340万台を生産し、販売台数はそれを上回る360万台だった。このまま海外からの輸入も維持されれば、国内の販売台数は430〜580万台にまで上ると推定されている。
米国のコンサルタント会社プライスウォーターハウスクーパーズのマルセーロ・シオッフィ氏は「重要なのは貿易収支。もし輸出台数が輸入台数を上回れば生産超過にはならないが、逆なら問題だ」と指摘する。
「昨年までは自動車業界にとっては好調だったが、輸入車に対するIPI増税など保護貿易主義的政策で数年のうちに状況は変わるはず」と同氏はみている。