ニッケイ新聞 2012年9月22日付け
在聖日本国総領事館に新しく就任した福嶌教輝総領事の歓迎会も兼ねて、ブラジル日本商工会議所(近藤正樹会頭)の『9月定例昼食会』が14日、サンパウロ市内のホテルであった。
ブラデスコ銀行チーフエコノミストのオタヴィオ・デ・バーロスさんが「ブラジル経済成長の謎」と題して講演を行なった。オタヴィオさんが講演するのは今回で3回目。
「ブラジルのGDP成長率の最も妥当な数字は4%前後」と評価し、ブラジルが世界でも安定した地位を築きつつあると説明。
経済成長を妨げている要因としては、大規模な旱魃、交通局の汚職による設備投資やトラック生産投資の滞り、不動産価格の高騰など国内の事情を挙げた。
しかしそれに対しブラジル政府が採った金利レートや電力コストの引下げ、人件費の低減等の対策は功を奏しており、特に「為替や金利だけに頼らず、競争力を高めようというジウマ大統領の方針はきわめて有望」と強調した。
中でも農業分野は来年、「エルニーニョ現象など気候的に有利な要因が重なり、歴史上まれに見る良い年になる」という。また、世界的に製造分野は過剰供給の状況にある一方で、消費市場のブラジルは他国の進出先候補となっていると話した。
依然として課題なのは人材不足で、若者層の減少も一因をなす。そのため就労適齢期の53%しか就労していない女性を市場に送り込む必要性を強調、そうでなければ移住政策を取らざるを得なくなると指摘した。
世界経済については「リスク回避の意識が薄れつつある。まだ若干の減速は続くが、全体的に深刻な破局はない」との予想を示し、来年のGDP成長率は3・5%という明るい展望を述べた。
欧州に関しては、ドイツの柔軟な姿勢や中央銀行の対策を高評価するも、「回復基調に戻るまでしばらく時間がかかる」とし、アメリカは「失業率は低迷しているが、能動的なテコ入れにより、産業活動再生ののろしが上がっている。今後はドル高の中長期的可能性もある」とした。
「中国のGDP成長率は7%台で推移するが衰弱は避けられず、コモディティの輸出国であるブラジルは大きなしわ寄せを受ける」と警告した。