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ジウマ大統領=〃通貨の津波〃に一石投じる=国連会議できょう演説=伯批判の米国に乗り込み=税率より為替レートが問題

ニッケイ新聞 2012年9月25日付け

 米国政府から貿易姿勢を「保護主義的だ」と批判されたことを受けたことと、先進諸国の金融緩和政策に対し、ジウマ大統領は渡米して国連会議で25日、ブラジルへのドル大量流入を防止すべく演説を行なう予定だ。21〜24日付伯字紙が報じている。ジェトゥリオ・ヴァルガス財団の国際貿易局のヴェラ・トルステンセン局長は今回の米国による批判について「ブラジルは税率規定を守っており、そこは批判の対象にならないはず。本来、米国が問題にすべきはブラジルがドル安に苦しんでいる為替レートの方だ」との指摘を行なっている。

 14日付け本紙でも報じたように、米国政府はブラジルが4日にメルコスール外からの輸入品100品目についての関税を引き上げることを発表したことに対し、米国が「保護主義的だ」として「世界貿易機関(WTO)に提訴も辞さない」との威嚇発言を行なっていた。19日、ロン・カーク米国通商代表はアントニオ・パトリオッタブラジル外相に文書を送り、「今回の関税引き上げは保護主義的であり、伯米関係に悪影響を与えかねない」との通告を行なった。
 これに対しブラジル側は、新たに定めた税率25%は、WTOが定める税率規定35%を守っているとの観点から「保護貿易には該当しない」とし、カーク米国通商代表の通告を「不当で受け入れ難いものだ」と遺憾の意を表明していた。
 むしろブラジル政府は、米国の連邦準備制度理事会(FRB)が13日に400億ドルの追加金融緩和を行なったことに対して強い不満を示している。ブラジル政府は米国に加え日本やEU(欧州連合)といった先進諸国が金融緩和をすることで為替が低めに変動して価値が下落し、相対的に新興国の通貨が高騰し、国内の輸出産業に打撃を与えると予想している。
 なかでも中国人民元のレートは対ドル連動性が高いため、ドルが下がれば中国製品も下がり、その分ブラジル製品が売れなくなると予想される。
 その表われとしてギド・マンテガ財務相は21日、ドル流入を防ぐべく、金融取引税を引き上げることを示唆した。ジウマ大統領も23日に訪米し、24日にはEU欧州委員会のジョゼ・マヌエル・バローゾ委員長と会談、先進諸国による〃通貨の津波〃による弊害を訴えた。
 きょう25日には国連会議の開会式で演説を行なう予定だ。そこで〃通貨の津波〃問題に加えて、ブラジルが非難しないことで他国から批判を浴びている、シリアのアサド政権について言及があるかどうかも注目されている。現時点でオバマ米国大統領との会談の予定はないが、二人とも今国連会議に参加するため、面会はありえるようだ。
 6月から9月の4カ月間、為替は1ドル=2・00〜2・05レアルの安定した動きを示している。これは1〜7月が1・70〜2・05の間で変動していたのと対照的な動きであり、さらに13日の米国の金融緩和後もマンテガ財務相が「1ドル=2レアルの状態からドル安にふれることはない」と語っていることからも、政府が為替のレアル安誘導を行なっていると見られている。