ニッケイ新聞 2012年9月25日付け
ブラジル最大の航空機メーカー、エンブラエル社が21日、スペインとの国境近くにあるポルトガルのエヴォラ市(人口約5万5千人)に、航空機用構造部材を製造する2つの工場「エンブラエル・メタリカス」「エンブラエル・コンポジトス」を開所した。欧州連合(EU)域内の生産拠点としては初。21日付電子版フォーリャ、22日付エスタード紙などが報じた。
「国外への積極的な進出を図る当社にとって、ポルトガルへの投資は、我々の戦略における重要なステップ。他業界が足踏み状態である中、航空業界は安定しているどころか、若干成長の見込みすらある」。開所式に出席した同社のフレデリコ・クラード社長は、欧州への初進出を決めた理由をそう説明した。
投資総額は1億7700ユーロ(4億6400レアル)で、同市の歴史地区から5キロのところにあるエヴォラ産業公園(Parque Industrial de Evora)内に、6万平米の土地に建設された。
建設計画は2008年に発表され、2010年に着工。開所と同時に操業を開始しており、来年下期には本格稼動させたい考えだ。
クラード社長によれば、ポルトガル政府からの特別優遇を受けており、投資資金は職業学校や研究所などの設立にも用いられる。「エヴォラ市民にとっても有用な投資」と同社長がコメントしている通り、周辺の地域開発にもなるようだ。
また、当面は約100人従業員で運営されるが、来年下期以降軌道に乗り次第、直接、間接含め約2千人の雇用を見込んでいる。
ポルトガルは近年欧州諸国を襲った財務危機の影響を最も受け、今も深刻な不況にあえいでいる。開所式に出席したポルトガル現地法人社長、アニーバル・カヴァコ・シルバ氏は「(工場設立で)国の生産性や競争力が高まり、投資が国の経済の再建に貢献するものと信じている」と期待をかけている。
エンブラエルは現在、航空機メーカーとしてはヨーロッパの国際協同会社エアバス、米国のボーイング社に続く世界第3位。昨年の初めには米国への進出も果たし、フロリダに工場を設立したほか、現在は稼動を停止しているが中国にも現地企業との合弁会社をもっており、世界に生産拠点を拡充しつつある。