ニッケイ新聞 2012年9月27日付け
ジウマ大統領は25日、米国ニューヨークで行なわれた第67回国連会議の開会式で演説をし、先進諸国の貿易姿勢について新興国の立場から批判を行ない、シリアへの武力行使へも苦言を呈した。26日付伯字紙が報じている。
24分間に及んだ演説で、ジウマ大統領は中東問題に言及し、米国との対立姿勢を明確に打ち出した。西洋社会に広がるイスラム嫌悪の雰囲気に警鐘を鳴らし、「ブラジルはシリアのアサド政権を大いに非難したい」との姿勢を見せながらも、「シリアの問題は武力では解消されません。外交と対話が必ずしも最良のものとは限りませんが、現実問題、それしか解決方法はない」と強調した。
「特定の国々のグループが国連安全保障理事会の代わりをすることは、国際法上の瀬戸際といえる」と武力行使などを先導する一部の国々を批判した。また「シリアで多くの女性や子供たちを犠牲にしている暴力のほとんどが政府によるものですが、反政府グループの暴力もあることを忘れてはいけない」とし、シリアの反政府武装勢力の後ろには、フランスや米国などの西洋諸国の支援があることを非難した。
これに加えて、大統領は「何百万人のアラブ系子孫を抱える国の大統領として、イスラム系の人たちへの嫌悪感が募ることは何としても避けたい」と中東問題が加熱することで起こりうる差別問題への懸念を表した。
金融政策に関しては、「先進諸国の首脳は、経済減速を止めて国内総生産をあげるために必要な、適切な財政調整や投資刺激策を見出していない」と強調し、解雇や減給で安易に乗り切ろうとするEU諸国の企業のあり方を批判した。
米国やEU(欧州連合)、日本といった先進諸国の中央銀行が自分達のことだけを考えて、立て続けに金融緩和をすることで世界の金融状況を狂わせ、「不自然な為替環境が出来上がって、新興国は市場を失う。それが世界の経済状況をさらに悪いものにして行く」と言い切った。
この他にアマゾンの伐採、米国によるキューバの貿易妨害、メルコスール、2014年のW杯や16年のリオ五輪などについても言及を行なった。だが、先進諸国に対する厳しい物言いが重なったためか、各国の外交代表団からの拍手は、昨年の国連会議で演説を行なったときほどには得られなかった。
この演説の後、ジウマ大統領は、この後に演説を行うオバマ米国大統領と会い、挨拶を交わした。オバマ大統領は演説の中でブラジルの名を2度出したが、新興国の立場を尊重する話の中であげたもので、批判的なものではなかった。