ニッケイ新聞 2012年10月2日付け
ブラジルの市長、市議選と同じ7日に投票が行われるベネズエラ大統領選で、野党のエンリッケ・カプリレス候補が反体制派勢力を集めて最後の追い上げを試みていると1日付伯字紙が報じた。
3期14年のチャベス政権に終止符をと叫ぶカプリレス候補は40歳。選挙戦の最終段階で10%ある支持率の差をカプリレス氏が覆せるか否か、国内外の注目が集まっている。
癌の治療開始以来、絶対安泰の予想が揺らぎ始めたチャベス大統領は、「癌は治った」と自己宣言したものの、街頭での選挙活動はほとんどしないなど、健康への不安を残したまま、選挙戦の最終段階に入った。
一方のカプリレス候補は世論調査でも徐々に支持率を上げている。9月30日付エスタード紙掲載の世論調査では、チャベス大統領49・4%、カプリレス候補39%で10%強差があるが、まだ決めていないという人の8割はここ半年の間にカプリレス氏支持に回っており、チャベス氏との差は縮む一方だ。
また、有力な世論調査の一つであるコンスルトレス21では、カプリレス氏支持が46・5%、チャベス大統領支持が45・7%で、カプリレス氏がわずかにリード。最後の最後まで予断を許さない状況といえる。
浮動票獲得の可能性と共にカプリレス候補の強みとなっているのは、積極的に街頭に出、戸別訪問を繰り返して若者達の支持を得てきている事。チャベス大統領の関心は政権維持のみで、インフラ(基幹構造)整備の遅れや周辺諸国への原油激安販売などの問題が山積みと指摘し、世代交代を呼びかけている。
また、チャベス大統領の出身地であるバリナス州で9月29日に起きたカプリレス候補の支持者銃撃事件は現政権での治安悪化を批判する材料の一つ。3人が死亡した銃撃事件の容疑者3人は逮捕されたが、同国の治安は南米最悪で、銃を使った犯罪が頻発。カプリレス氏に変革を求める声も強まる中、投石や道路封鎖など、チャベス派の選挙妨害も増えている。
現大統領には石油で儲けた金を国民のために使う気はなく、権力の維持だけを考えていると批判するカプリレス氏は、大統領による散財はリオのサンバ学校にも及び、同校への寄付は90万ドルというリストまで作成。
ルーラ前ブラジル大統領を信奉しているというカプリレス候補は、9月30日もカラカス市内で街頭演説を行い、ボリヴァル大通りを埋め尽くすほどの支持者を集めたが、現政権の石油輸出政策を批判するなどの強い論調に不安を覚えているのは、中南米の国々。同国に武器を輸出しているロシアや同国最大の債権者である中国に対しても合意見直しを訴えるカプリレス氏は、米国やイスラエルには歓待されそうだが、独立した南米構造の発展を望んできたブラジルなど南米・カリブ諸国はチャベス氏続投を望んでいる。