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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年10月2日付け

 その昔—自民党の総裁選挙には「ニッカ」「サントリー」「オールドパー」と言われ政界の裏面では巨額なカネが往還していた。ニッカは2陣営から資金を貰い、サントリーが3陣営、オールドパーは全ての陣営からのカネを手にしパー(白紙投票)にするというのだから、まあ驚くしかない。佐藤内閣の後継者を選ぶ72年の角福戦争では、田中陣営から中曽根派に7億円の資金が流れたの噂があり「政界の金満家ぶり」に庶民は茫然自失としたものである▼だが—今や自民党の派閥もすっかり貧しくなり、総裁を選ぶの重大事になっても、隠し金庫には借金の証文ばかりが重なっており、とてものほどに資金手当てどころではない。これに比べると、金庫から金の延べ板がいっぱい出てきた政界の実力者・金丸信氏の「腕力」がいかに強かったかが判かる。若い人たちは、この金権政治の泥臭さを蔑視し、あざ笑うかもしれないが、この田舎芝居が政治の実態であったのだ▼こんな古臭い政治手法も幕を引き21世紀になると、かなり綺麗な政治行動となり、今回の総裁選も「汚れたカネ」の暗闘は無かったようだ。激戦が続き、結局—安倍晋三氏に決まり、初の元総理再登板となったが、安倍氏は祖父・岸信介氏の政治信条を受け継ぎ、憲法改正や日米同盟の強化など保守派であり、政界が厳しくなる事態も起こりうる▼石破氏の敗因は、森喜朗元首相らの長老らが「反対」したのが大きい。それでも、安倍氏の要請を受け幹事長に就任し、衆院選の陣頭指揮に立ち、政権奪回に全力を上げる実力派である。(遯)