ニッケイ新聞 2012年10月4日付け
アルゼンチンが2月に新たな輸入規制を導入した事などで、9月の対亜貿易での黒字は1億5700万ドルとなり、昨年同月比80%減と3日付エスタード紙が報じた。
ブラジルにとって、亜国は中国、米国に次ぐ貿易相手国で、貿易収支の大幅な縮小は、輸出の落ち込みが輸入の落ち込みを上回ったのが原因。9月の対亜輸出は14億8千万ドルで昨年同月比33%縮小したが、輸入は13億2300万ドルで8%減に止まった。
この傾向は1〜9月間の累積でも明らかで、輸出は134億7千万ドルで昨年同期比20%縮小したが、輸入は6%減の116億ドル。貿易収支の黒字は18億7千万ドルで59%落ち込んだ。
9月の対亜輸出で落ち込んだ品は、鉄鉱石やトラクター、ポンプ、コンプレッサー、タイヤ、プラスチックポリマー(高分子化合物)、自動車、車用のエンジンなど。7月までの累積では、肥料や消毒薬の77%減を始め、輸送用材料56%、皮や革製品53%など、24品目中20品目の輸出が昨年同期の実績を下回った。
クリスチーナ・キルチネル亜国大統領は、2011年12月の再就任演説で「釘一本だって輸入しない」と述べており、2月には輸入品は全て事前に申告し、許可を取るよう規制された。
同規制は南米南部共同市場(メルコスール)や南米同盟(ウナスール)加盟国にも一律に適用されており、ブラジルでは、7月までの対亜輸出が輸出全般に占める割合が7・5%(昨年同期は20・1%)のみとなった。一方、同国からの輸入は、同国の輸出総額の19%を占めている。
亜国が導入した輸入規制は同国の国内産業保護策の一つで、08年の国際的な金融危機勃発以降は世界的に保護主義色が強まっている。9月21日付エスタード紙には、ブラジルが輸入車など100品目の課税率を引き上げたのは保護貿易主義の表れと苦言を呈す文書を米国が送付したが、ブラジルは米国の通貨政策がドル安を招き、新興国に多大な影響を及ぼしたと反論した事が書かれている。
このやり取りは、ジウマ大統領が9月25日の国連総会で〃通貨の津波〃という言葉を使い、先進国の通貨政策を批判した事にも繋がっている。ジウマ大統領は、2日の南米・アラブ諸国首脳会議(ASPA)でも、米国の連邦準備制度理事会が400億ドル分の同国国債を購入すると発表した事を挙げ、先進国の採る通貨政策は、新興国からの輸入を抑えるための形を変えた保護主義に他ならないと批判した。