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山口県人会=会館増築と改修を決定=W杯前の落成を目指す=会の将来のため、団結=総予算は108万レ

ニッケイ新聞 2012年10月4日付け

 「85年も続いた会を、ここで分解させるわけにはいかない」—。ブラジル山口県人会(要田武会長)の臨時総会が先月23日に同会会館で開かれ、部分改修と宿泊施設の増築(総予算107万8千レ)を行うことが満場一致(出席者約20人)で決まった。今後は資金集めを行いつつ来年には着工、2014年5月のW杯前の落成を目指す。要田会長は「次世代に残す最後のもの。前向きに邁進していきたい」と決意を示した。費用の半分は県、残額は県の日伯友好協会を通じた県民や県内企業からの寄付、県人会が調達する。工事には様々な規制があり困難が予想されるが、同会は未来に向けた確実な一歩を踏み出した。

 同会では20数年来、老朽化が進んだ会館の新築が検討されてきたが、資金の問題で具体化には至らず、2007年から会館建設委員会(平中信行委員長)が新たに検討を開始していた。
 ところが今年に入り、サンパウロ市役所内の歴史文化環境遺産保存審議会(CONPRESP)から、会館の建物を「文化保護地区」の指定候補とし、5月に同会にもその旨を知らせる通知が届いた。
 もともと建物は、サンパウロ市立劇場なども手がけた有名建築家、ラーモス・デ・アゼベードによる設計で、1973年に県庁と県人会の折半で買い取ったもの。文化財指定候補に挙がった時点で、原則として建物の維持管理や利用に必要最低限の補修や改装しか行えなくなり、取り壊して新築することが事実上不可能となってしまった。
 「このままでは会の運営ができなくなる」と冒頭で要田会長、西村武人顧問は説明。実際に昨年2月の大雨では天井が落ちるほど屋根の材木が腐食し、安全性を考えても改修は必須だ。
 またそれ以外に、改修と増築には複数のメリットがある、というのが役員の間で一致した見解だ。会館はメトロの駅から近く立地が良い。近年、周辺には大学や予備校が増え学生が多く、下宿用の部屋を増やして整えれば家賃収入が見込め、ブラジル人の若者との交流の場ともなりうる。
 さらに、改修して事務局機能も拡充することで、W杯や五輪に向け日本人へのブラジル情報の発信、伯社会に向けた山口県のPRなど活動の幅も広がり、県と県人会の関係強化も期待できるという考えだ。
 事務局長の伊藤紀美子さんは「毎年の日本祭りや85周年式典も、青年が積極的にかかわって手伝ってくれている」と若者の役割の大きさを指摘する。「今のままのいい形で次世代に引き継いでいきたい。これが私達一世にできる最後のことではないか」と思いを語り、青年部長の脇山マリーナさん(36、二世)は「会はなくすべきじゃない。特に宿泊施設は絶対やるべき。山口県人会ならではのものを考えていきたい」と応えた。
 前半は静まり返っていた会場だが、最後は「今やるべき。お金が集まるのを待っていては始まらない。やっていくうちに自然と集まると信じている」「できる限りのことはしたい」との積極的な意見が続き、結果的に満場一致で承認された。
 具体的には会館の外装と地下の改修を行い、1階は県人会事務所、応接間、小ホール、キッチンとして使用、2階部分の4部屋、裏庭に増設する建物を宿泊施設にする計画だ。今後、計画書はサンパウロ市文化局とCONPRESPへ相談の上承認を得て、着工に移るという。