ニッケイ新聞 2012年10月10日付け
国際通貨基金(IMF)が8日に発表した12年と13年の経済成長見通しによると、ブラジルの今年の成長率は7月の予想より1%ポイント低い1・5%、来年の成長率も0・6%ポイント低い4%に引下げられ、公共投資の増額などの必要が指摘されたと9日付伯字紙が報じた。
IMFが発表した成長率は7月に出した数値を見直したもので、08年のリーマンショックに端を発した国際的な金融危機とその後の欧州経済危機による爪あとは、今も世界各国に色濃く残っている事を痛感させる。
国際的な金融危機による景気後退(リセッション)は予想以上に回復が遅れ、いち早く危機脱出といわれたブラジルでも、その後に表面化した欧州経済危機以降、景気減速化の影響が続いている。
世界経済の回復の遅れを示す数字の一つはIMFの成長予想で、今回発表の全世界の成長率は今年が3・3%、来年も3・6%で、7月の予想より各々0・2%ポイント引下げられた。
11年は2・7%の経済成長だったブラジルは見直し幅が大きく、今年の予想は2・5%が1・5%に引下げられた。この数字は先進国全体の1・3%とほぼ同じで、今年3・2%、来年3・9%成長予想のラ米・カリブ諸国でも低い方だ。
ブラジルも属する新興国の今年の成長予想は中国7・8%、インド4・9%、ロシア5・3%、メキシコ3・8%などとされ、全体で5・3%。来年も、中国の8・2%を筆頭に5・6%成長すると見られており、ラ米では最も早く回復と見られるブラジルの4%は、むしろ低率といえる。
IMFの成長見通しが引下げられたのは、景気の回復が予想以上に遅れている事の表れで、中国経済が予想以下の成長となれば世界経済の回復も更に遅れると懸念する声もあるのが実情だ。
このような流れを受けて意見が分かれているのが経済基本金利(Selic)と基礎的財政収支の目標引下げで、インフレ圧力も高まる中、10日の通貨政策委員会(Copom)で0・25%ポイント引下げと予想される基本金利がその後も下がるか否か、史上最低となった基本金利がいつまで続くかは専門家も確信が持てずにいる。
また、ここ数カ月の政府支出増大で、過去の債務に関わる元利払い以外の支出と公債発行などを除いた収入との差である基礎収支の目標を、国内総生産(GDP)の3・1%以下にしようとする動きもあるが、IMFは基礎収支の目標引下げには反対と提言した。
IMFは、11年8月から始まった経済基本金利切下げや鉄道や空港の運営権委譲などの対策は正しいが、公共投資の増額や基幹構造(インフラ)の整備による物流停滞などの問題改善の必要を指摘。不動産価格の高騰や負債を抱える国民の比率と負債額の増加にも警鐘を鳴らしている。