ニッケイ新聞 2012年10月16日付け
サンパウロ州カンピーナスのヴィラコッポス空港で13日、タイヤのトラブルがあり、15日までに約400便のキャンセルが相次ぐ大混乱となった。同空港は第2滑走路を2017年に開設することを発表したばかりだった。15日付伯字紙が報じている。
ブラジルにおけるインフラの不整備は国の発展を妨げる要因として古くから指摘されていた。輸送手段の利便の悪さがコスト高につながり、工業生産を足踏みさせる悪循環を起こしている。国内総生産(GDP)を確実に年4%成長させたいジウマ政権にとっても大きな課題で、8月15日に1330億レアルをかけた30年計画で国道と鉄道の建設プランを発表したのも改善策の一つだった。
それに加え、ブラジルでは14年にサッカーのワールド・カップ、16年にリオ五輪という国際的な大イベントを控えており、観光客の輸送手段の確保は必須の問題。W杯開催都市のインフラ整備は大幅に遅れており、空港の拡張もままならないまま、2大イベントを受け入れざるを得なくなっている。
そんな矢先に今回の騒動は起きた。13日午後8時頃、ヴィラコッポス空港の滑走路で米国マイアミからの貨物便MD11号のタイヤがパンクし、その場から動かなくなってしまった。
同空港は滑走路がひとつしかなく、MD11号が撤去されない限り離着陸ができないことから、後続の便はキャンセルを余儀なくされている。
13〜14日の同空港はノッサ・セニョーラ・アパレシーダの連休を利用した旅行客などでごった返しており、足止めされた乗客は航空会社の用意したバスでクンビッカ空港やコンゴーニャス空港に向かい、便変更手続きなどを行なった。事故の影響で空港周辺の高速道路では、通常以上の渋滞が起きた。
空港側は14日夜8時までの再開を目指していたが問題は解決されず、15日午前11時現在も閉鎖されたまま。同時刻までに欠航となった便は約400便で、2万人以上の足に影響が及んでいる。同空港発着便の85〜95%はアズール航空のもので、残りはTAMやGOLの便だ。
ヴィラコッポス空港は今年2月に民間企業への運営権委譲が決まり、ブラジルの空港のインフラ拡張の目玉のひとつと目されている。同空港では2017年までに第2滑走路を開設し、ブラジル初の離着陸が同時に行なえる空港にする予定で、利用客も700万人から1400万人に倍増する見込みであることは9月19日付本紙でも報じたが、今回の騒動は、そうしたインフラ整備が5年後では遅すぎることを証明、14年のW杯にも一抹の不安を残すこととなった。
民間航空運営学のマルクス・レイス教授は、同空港の便数増加が許容範囲を超えていることを指摘した上、このようなトラブルはブラジルのいずれの空港でも起こりうると警鐘を鳴らしている。