ロリータ・ファッションリーダー 松田明美さん=〃カワイイ革命〃進行中
ニッケイ新聞 2012年10月16日付け
「〃カワイイ革命〃でお色気三昧のブラジルを変える!」—そう宣言するのは、当地のロリータ・ファッションリーダー、三世の松田明美さんだ。ピンクや白を基調にしたレース・フリルたっぷりの服を着て、全伯各地のイベントでロリータ・ファッション(以下、ロリータ)普及に努める。
松田さんの言う「カワイイ革命」とは、日本のポップカルチャー研究家・櫻井孝昌さんが唱えた言葉の借用で、女性のセクシーさばかりを追求しがちなブラジル風のファッションを、日本風の「カワイイ」に変える運動のことをいう。
松田さんはブラジル生まれの日本育ち。7カ国語が堪能で在日ブラジル大使館の通訳だった伊系二世の母と、大分県人の祖母に育てられた。東京にある父親の実家が「外国人の妻なんて」と結婚に反対したため、父とは会わずじまい。「でもそれで辛いと思ったことはない。『何でも一人で出来るようになれ』と厳しく育てられたお蔭で、クラスを牛耳って悪口言わせなかったくらい強くなった」と気丈な一面をちらり。
2006年、ポルト・アレグレであったアニメ関係イベントで初めてゴシック・ロリータを目にし、メルヘン好きで目立ちたがりの元バレリーナの血が騒いだ。
ロリータは欧米文化を地盤にした日本独自の文化で、世界中で愛好家の輪が広がっている。周囲の目を引く奇抜な服装だが、あくまで普段着として使用。別人になりきるコスプレとは別物だ。
日本語能力試験1級という語学力を活かして日本語教室を経営しながら、様々なイベントにロリータ・スタイルで顔を出すようになった。
「いつもこの格好だけど、見られても気にならない。それよりブラジル人女性に、女性の美は外見のセクシーさじゃなく、内面にあると教えたい。自分の本当の輝きは無限大」と力を込める。
08年に雑誌「Made in Japan」(JCB出版)に松田さんのインタビューが掲載され、続く09年には日本からポップカルチャー発信使、通称「カワイイ大使」が来伯した。以降ファンが急増しており、松田さんによる当地のロリータ人口推定人数は男女含め約千人。全伯各地で、喫茶店を貸しきりロリータが集う「お茶会」が催されている。
「日本でバレリーナをしていた頃は、競争に勝つために毎日血を流していた。でもロリータは私を純粋、そして幸せにしてくれる」。表情や内面も若返る、それがロリータの真髄だという。
「バーよりカフェ、ビールよりも紅茶とケーキ。サンパウロをもっと可愛くしたい」。夢は政治に携わり、社会を変革すること。松田流〃カワイイ革命〃はまだ始まったばかりだ。