ニッケイ新聞 2012年10月17日付け
サンパウロ市市長選のジョゼ・セーラ候補(民主社会党・PSDB)が、フェルナンド・ハダジ候補(労働者党・PM)の批判材料として使った「キット・ゲイ」に似た同性愛者理解のための教育教材を2009年に配布していたことが指摘され、セーラ氏がハダジ氏が作成したものとの違いを説明した。16日付伯字紙が報じている。
ハダジ氏は教育相だった2006年に「同性愛嫌悪者のない学校プロジェクト」を提唱し、08年に3本のビデオに解説書をつけた教育教材を全国600の学校に配布した。だが、11年にビデオの内容がネットに掲載されて話題になり、かねてから同プロジェクトを「キット・ゲイ」と呼んで批判していたカトリックや福音派が猛反発し、ジウマ大統領が配布の禁止を行なった。
セーラ候補は14日付エスタード紙のインタビューで、「キット・ゲイ」は「非常に出来の悪い、不適切でばかげた内容だ」と批判。これを受けてブラジル同性愛者協会(ABGLT)のトニ・レイス会長が「サンパウロ市民の同性愛者嫌悪を助長させかねない」と怒りの声明を出していた。
だが翌15日、フォーリャ紙のサイトが、セーラ氏がサンパウロ州知事だった2009年に「キット・ゲイ」に似た教育教材をサンパウロ州全ての中等教育の学校に配布していたことを明らかにした。この教材は、「キット・ゲイ」同様、ビデオに解説書をつけたものだが、そのビデオの中に、アニメーションのキャラクターが自身が同性愛者であることに気づく場面が描かれ、少年少女が同性同士で手をつなぎ、抱き合い、キスをする場面が描かれている。さらに、その中の「カバンの人形」という話では、ある男子生徒の母親が息子のカバンに人形が見つかったことで呼び出される場面もある。
この報道を受けセーラ氏は15日、この教育教材が「キット・ゲイ」と性質の異なるものであることを説明。同氏の見解では、この教材は「性教育に特化したものではなく、経済格差や宗教など、あらゆる偏見に対応して作られた教師向けのもの」であるという。
一方ハダジ氏はセーラ氏について「〃こういう教育教材は作ったことがない〃と言っておきながら、翌日にはそれが嘘だとばれている。世論を惑わすいい迷惑だ」と批判した。