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大統領が森林法を裁可=9項目で拒否権行使=永久保護地区縮小認めず=議員達からは反発の声も

ニッケイ新聞 2012年10月19日付け

 ジウマ大統領が17日に森林法を裁可し、18日付官報に掲載するが、下院が9月に承認した内容が9項目にわたって拒否され、農業畑出身議員達から反発の声が上がっていると18日付伯字紙が報じた。

 家族経営の中小規模農家を守る—。森林法改定の際、農牧業関係の議員達が強調した言葉だが、ジウマ大統領は、下院が承認した改定森林法の裁可にあたり、永久保護地区(APP)の範囲縮小など、9項目で拒否権を行使した。
 来年度予算案の審議を前に、議会との関係を良好に保っておきたい大統領が、審議の際も政府と議会の間で見解の相違が見られた森林法の裁可でどの程度の拒否権を行使するかは、農業関係者も気にしていた。
 大統領との会談後、会見に応じたイザベラ・テイシェイラ環境相は、拒否権の行使は「環境と社会のバランスを崩す可能性のある項目全てが対象となった」と説明。農耕地であっても恩赦や不法伐採は認めず、国民全体から支持を得られるか否かを判断の基準とした裁可だったという。
 APPは、水源の枯渇や土地の侵食、それに伴う災害の発生などを防ぐために制定されており、水源地や川の周辺、山や丘陵地の斜面や頂部分などが対象となる。議会が承認した改定法は、APPの範囲を狭め、不法伐採した土地に植える樹木の種類の選択肢を増やすなど、農家を優遇する内容となっていた。
 これに対し大統領は、APPの範囲縮小や原生種ではない果樹を使った植林、所有地の半分が保存地域に入る場合はそれ以外の土地に残る原生林と合わせて植林範囲を決めるという項目を拒否。農地や周辺の環境に関する諸情報を衛星写真も含めて登録する「農業環境登録(CRA)」を実施し、「環境回復計画(PRA)」の対象となる農家を判別した上、回復すべき範囲を確定するという政策も発表した。
 APPの範囲については、川幅が2m以下なら農地の規模には無関係に川から5mまでとする項目を拒否。1区画未満の農地は川幅に関係なく5m、1〜2区画は川幅に関係なく8mの保護と回復が義務付けられる。
 それ以上の規模の場合は、4〜15区画で川幅10mまでの時は15mとの項目が、4〜10区画で川幅10mまでが20m、それ以上の規模の土地は川幅に関係なく、10区画未満でも川幅が10mを超える時は川幅の半分を目処に、最低30m、最高100mの範囲の保護と回復を義務付けた。
 大統領が拒否権を行使したのは議会審議の際に政府側の主張が退けられた項目で、農牧業関係の議員達は、APPの範囲なども修正された事に反発。下院が満場一致で承認した法案を大統領が思うように改ざんしたと批判し、再交渉の余地がなければ裁判に持ち込む姿勢も見せている。