ニッケイ新聞 2012年10月20日付け
全国電力システム運営機構(ONS)が18日に重油を使った発電再開を決めた。ペルー沖の海面水温が上がるエルニーニョ現象の影響で雨が降らず、水力発電所のダム貯水量が減っているためで、来年以降の電力料金値上りが懸念されると19日付伯字紙が報じた。
ONSが重油を使った発電再開の必要を検討し始めたのは9月。重油発電は水力や天然ガスによる発電より経費がかかるため、電力料金値上りに繋がるのを避けようとして降雨を待っていたが、水力発電所のダムの水位低下で再開となった。
重油を使った発電再開は08年以来の事で、現在の貯水量では、水力発電と天然ガスや石炭、サトウキビの絞りかすなどのバイオマス利用の火力発電併用だけでは電力量確保が難しくなったと判断した事を意味する。
降雨不足によるダムの水位低下は深刻で、南東伯と中西伯のダム貯水量は、これ以上減ると水力発電の維持が困難となる限界曲線(CAR)を11・5%上回るのみの41・8%。北東伯の状況は更に厳しく、CARを5・3%上回るだけの37・4%で、南伯は38%、北伯は46%と報告されている。
ONSは雨の季節が始まる11月中には水位が戻ると期待しているが、これ以上貯水量を減らさないための重油発電は、14億レアルの経費増大も意味し、来年の電力料金調整時に影響が出るのは避けられない。
フォーリャ紙には、19日が最終回のグローボ局の連続TVドラマ(ノヴェーラ)「アヴェニーダ・ブラジル」が高視聴率を上げている事から、番組終了後に迎えるであろう電力消費量のピークに対応するための処置とも書かれている。
17日のピーク時の消費電力量は6万9600メガワットだったが、ONSでは、最終回を見ていた視聴者が、終了と同時にシャワーやアイロンなどを使い始めれば、17日を上回る7万6700メガワットに達する可能性ありと見ている。
鉱山動力省は、ONSが必要と判断したのだから重油発電は当然との見解を表明しているが、重油を使った場合、1メガワット/時間毎の発電経費は700レアル。水力発電は100レアル以下で、天然ガスによる発電は約300レアル。重油発電再開でも供給が足りなくなった時に再開されるディーゼル油を使った発電の場合は1メガワット/時間毎に1千レアルがかかるという。
ブラジルの電力供給は降水量に左右される水力発電への依存度が高いが、水力発電所は環境面に与える影響が大きく、ベロ・モンテやジラウなどの大規模発電所でも貯水ダムの規模が縮小された上、建設に反対する動きも根強い。一方の火力発電所は経費が高く、地球温暖化ガスなどの汚染物質を排出するのが弱点だ。国内外での干ばつは、食料価格や電力料金の動きにまで影響している。