ニッケイ新聞 2012年10月20日付け
サンパウロ市市長選の決戦投票を10日後に控えた18日、フェルナンド・ハダジ候補(労働者党・PT)とジョゼ・セーラ候補(民主社会党・PSDB)が対面でテレビ討論会を行い、公立病院での保健プラン使用をめぐる問題などで熱い議論を交わした。19日付伯字紙が報じている。
バンデイランテス局が主催した公開討論会で沸騰した話題の一つは公立病院の運営についてだった。ハダジ候補は、アウキミンサンパウロ州知事が打ち出した、公立病院の病床の25%を民間の保健プラン利用者のために確保するという案を批判した。公立病院は統一医療保険システム(SUS)の管轄で、本来は民間保健プラン利用者に対応する責任はないが、この案は民間プランへの対応で運営費の一部が賄えると考えて作られたもので、検察局が差し止めた。
サンパウロ州やサンパウロ市の公立病院は、マリオ・コヴァス元サンパウロ州知事(PSDB)の在任期(1995〜2001)に作られた社会機構(OS)という組織が運営しており、PTは、OS創設当時から公立病院民営化と批判してOS撤廃を求めていた。
セーラ氏は「OS問題はその昔、ジョゼ・ジルセウも最高裁に持ち込もうとしてたよ」と、メンサロン事件で有罪となったPTの先輩の名を出して答えた。同氏はキャンペーンでのハダジ氏批判にジルセウの名前を良く使っており、ハダジ氏が「選挙に立候補してもいないのに、ここでもジルセウですか。とりつかれてでもいるんですか」と反論したが、「君だってカサビにとりつかれてるじゃないか」とセーラ氏は言い返し、選挙CMと同じ論戦を繰り返した。
この席でハダジ氏は、市長就任になったらOSを撤廃するとの噂を否定した。18日は討論会の前にサンパウロ市内の児童リハビリセンターを訪れ、私立病院の経営方法を公立病院でも取り入れるという現行システムを続けて行く意向を示していた。
一方、PSDBは、ハダジ氏が提唱する「へッジ・オーラ・セルタ」は、救急医療施設(AMA)など、OSによって運営されている施設を無にするのも同然と認識している。セーラ氏は、公式サイトやフェイスブックとツィッターで「OSが廃止されたら、サンパウロ市の病院の医療システムはPT市長時代に逆戻りし、混乱が起きる」との声明を出していた。
公開討論ではこのほかにも、ハダジ氏がセーラ氏に対し「あなたが市長時代の手柄のように言っている学校建設などは連邦政府の援助でできたものだ」などと批判を行い、セーラ氏はハダジ氏が唱えている減税政策に対して疑問を唱えるなどの舌戦も展開された。