ニッケイ新聞 2012年10月23日付け
全国各地で停電が頻発し、保守の不備や安全装置の不具合など、送電システムの安全性に疑問が生じていると21日付エスタード紙が報じた。エジソン・ロボン鉱動相は10月3日の広域停電は単発的なものと評価したというが、折角できた風力発電所も送電設備がなくて稼動しないなど、計画性の無さも目に付く。
ここ数週間〃停電〃の言葉を頻繁に聞くが、9月15日〜10月15日は全国で14件、平均すると2日に1度停電が起きており、全国の送電システムの安全性に疑問が生じているという。
今年の累計は63件だが、9月15日〜10月15日の停電発生が14件というのは、昨年同期の9件と比べる50%以上増えており、深刻な状況だ。100メガワット以上の停電は11年中に97回起き、07年の29%増という数字からみても、ここ数週の停電発生率の高さがわかる。
これらの数字は全国電力システム運営機構(ONS)の日報からとったもので、ブラジルの送電システムは信頼に足るという政府見解と相違する結果となっている。
10月5日付エスタード紙によれば、3日に起きた南伯、南東伯、中西伯並びにアクレ、ロンドニアの2州に及んだ停電も、エジソン・ロボン鉱動相にとっては半時間程度で回復した〃単発的〃なものだという。
これに対し、停電頻発は送電システムに問題がある事を示すと見るのはサンパウロ総合大学(USP)のイウド・サウエル教授だ。同教授によれば、ブラジルには50年以上使っている設備もあり、単なる保守ではなく、設備交換が必要な時期が来ているという。
エルメス・シップONS総務理事は、この指摘に「2001年以降、保守のための投資は充分すぎるほどされており、停電発生に繋がるような問題はない」と反論する。だが、電気技師で全国エネルギー消費者協会(Anace)会長のカルロス・ファリア氏は、変電器は急に壊れるものではなく「保守の不備は明らかだ。設備交換の時期に来ている」と言う。
ブラジル大手送電業者協会(Abrate)のセーザル・デ・バロス・ピント総主事は、送電システム自体は悪くなくても、停電を最小限の範囲に抑えるための保護対策が不十分と評価している。
USPでの研究によると、従来は大型発電所からの送電だけに対応すればよかったシステムが、風力やバイオマスなどの小規模な発電所からの送電にも対応しなければならなくなり、コントロールが複雑になった事も停電の一因となりうる。
そういう意味ではバイア州に誕生した大規模な風力発電施設は願ったり叶ったりだが、9月30日付エスタード紙によれば、発電施設は完成しても送電設備は着工さえされておらず、折角の風車はただの置物。2009年入札の風力発電所は32カ所が止まったままだが、土地使用料の支払い等は既に始まっている。