ニッケイ新聞 2012年10月23日付け
パラグァイのフェデリコ・フランコ大統領は、ニューヨークで開催された第67回国連年次総会の最終日(9月27日午後)に、200名ほどの出席者の前で約30分間原稿も読まずに初めてにして最後の国連演説を行った。
6月22日に「政務の業績不振」の廉で、国会の弾劾裁判に依り解任されたルーゴ前大統領の残余任期(来年8月15日迄)に、副大統領から昇格した後任立憲大統領として初だった。
冒頭、パラグァイ国は常に国際紛糾や係争問題は平和的手段に依っての解決を先ず図るべきを国是とするものであるとし、続いて前フェルナンド・ルーゴ大統領が去った後のパラグァイ政情に概略的に触れて、6月22日の政権交代で歴史は大きく変わったのであると述べた。
しかしてそれ以降、「余は平和に、自由な民主主義的基本秩序の下に我が国の統治に当たっている」と言明した。
現在パラグァイが直面するメルコスール問題については、「全人類最高権威の当会議に於いて、パラグァイは如何なる列強の内政干渉も絶対に許せない事を断乎として明言するものである」と述べ、次いで嘗ての不当な三国戦争(1865ー70)の悲惨なホロコーストの悪夢から未だにパラグァイの国民は覚め切れずにいるのである、と付言した。
因みに、現在のパラグァイの困難な国際情勢の問題は我が政府が立憲民主体制を正に貫いたが故に、国際法に違反してメルコスール及びウナスール各国が犯した内政干渉に依って生じたものである。他の諸国とは何ら問題なく友好親善関係を保っている。
なお、国連の安全保障理事会の改革と其の主導性の改善は、公正な国際法の遵守に依って樹立できるものであって、其の為にブラジルが主張する常任及び非常任理事国数夫々の増加案に我が国は賛成であると述べた。(但し、ブラジルの念願たる常任理事国加盟、又はアルゼンチンの悲願である、英国とのフォークランド島嶼の主権紛争問題の解決に関してパラグァイは必ずしも支持や賛成の票を約束はできないと云う含みがある)。
フランコ大統領は、パラグァイはエネルギー大国である事に触れ、其の恩恵は国内及び外国の便宜に供されるべきである。而して、一方パラグァイは海を持たない内陸国のハンディキャップを負う事情を隣国諸国は良識的に理解し、不当に我が国の通商妨害を犯さない様に求めた。
パラグァイは大国小国、強者弱者、富者貧者が共に隔てなく集い合える、美しい国際理想の正義の大世界会議(国連)の構造強化を引き続き推進すべく呼び掛けるものである。
故に、パラグァイは其の改革の過程に於いて、常任理事国の拒否権発動の権限を徐々に排除して行くべく提唱するものであると強調した。
なお、フランコ大統領は来年4月21日に開催される次期大統領全国総選挙が平穏理に且つ透明に行われるべく現政府は確約するもので、OAS・米州機構、メルコスールやウナスールなどの国際機関からの選挙監視ミッションの来訪を心より歓迎するものであると誓った。
そして、「余は、より強化された自由の民主制体制を次期政権の為に遺したい」と其の抱負を開陳し、最後にパラグァイの公用語であるグアラニ語で〃全人類の平和と祝福〃を祈願して演説を終わった。