ニッケイ新聞 2012年10月24日付け
ブラジル農業の発展に貢献した農業関係者に贈られる『第42回山本喜誉司賞』の伝達表彰式が19日、文協ビル貴賓室で行われた。今回の受賞者5人は推薦によって選ばれた18人の候補者から選出され、故人である永井洋さん(享年68、帰化人、東京)にも感謝状が贈られた。福嶌教輝在聖総領事ら来賓を含め、日系団体関係者や家族・友人ら約160人が会場を訪れ、受賞を祝った。
戸田正紀さん(61、和歌山)は約20年間同じ土地で高品質メロンの栽培を行い、ハウス栽培農家の模範となった。「これを加えれば必ず土が肥える、という堆肥はない。土と向き合い試行錯誤を重ねながら、新しいものの開発を怠らなかったことが今につながっている」と誇らしげに話した。
「非常に大きな責任を背負う上に収入も減る。それでも真剣に挑戦したいテーマだった」。52歳という若さでの受賞となった大田ジルベルトさん(三世)は、現在も第一線でセッテ・バーラス市の環境、貧困の両問題の解決に向けた環境保全型農業の普及活動に取り組む。「社会的な仕事をする上で重要な受賞。仲間と共に精一杯頑張りたい」と今後のさらなる奮闘を誓った。
「身に余る光栄。まさか自分がもらえるとは思っていなかった」と話したのは、サンパウロ州アラサツーバ市でオクラ栽培の普及・発展に貢献した白石一資さん(77、二世)。「15歳の時に父と一緒に始めたオクラでもらった賞。亡くなった父に今回の受賞を捧げたい」と喜びを噛み締めていた。
全伯で使われる芝のうち9割以上の生産を誇る「イトーグラス」グループの創設者である伊藤実さん(72、二世)は、米国研修・視察の経験からビジネスを展開。代表品種の「エズメラルダ種」は、マラカナン球場の芝の張替え時にも使用された。受賞の感想を尋ねると「自分が生涯をかけやってきたことが認められたのは本当に嬉しい」と笑顔を見せた。
中川ジュリオさん(77、二世)は、ボツカツ農科大学において、農業分野に関する研究と農事教育を25年に渡って行ってきたことが評価された。「知り合いや関係者の応援があってここまでやってこられた。感謝の思いで一杯です」と感慨深げに語った。
トマト、レタス、ピーマンなどの当地向け品種改良をし、03年に亡くなった永井さんの代わりに記念プラッカを受け取った妻ヴィオレッタさんは、「彼は賞をもらうに値する立派な人物だった。心から誇りに思います」と胸を張った。
挨拶に立った近藤四郎同賞実行委員長は「どの受賞者の功績も一朝一夕で成し遂げられるものではなく、こういった方々を表彰できることは非常に喜ばしいこと」と賞賛の言葉を述べた。
式典後には食事会が開かれ、受賞者を中心とした輪の中で各人の受賞を祝福した。中川さんの妻よしえさん(二世、69)も「本当に嬉しくて自分のこと以上に幸せ。心から誇りに思います」とはにかみながら話していた。