ニッケイ新聞 2012年10月25日付け
ブラジル経済の発展や労働市場の多様化で、高等教育や技術者養成講座の必要が一段と拡大中と22日付エスタード紙が報じた。14歳までの子供の就学率はほぼ100%になったブラジルだが、就労前の準備が出来ぬまま現場に飛び込む若者も多く、教育の場の数と質の両面が問われている。
技術者の不足は15万人—。熟練労働者の不足が叫ばれて久しく、ブラジルの就労者1千人当たりの技術者数は6人だが、日本や米国は1千人当たり25人という数字は、ブラジル工業界の国際競争力の低さの一部も物語る。
この場合の技術者は建築や土木、化学、物理、電気・電子工学、農牧業なども含む。経済活性化計画(PAC)やワールドカップ(W杯)、リオ五輪などの需要が続いている事もあり、この先5年で必要な技術者は30万人といわれると、早急な解決策はあるのかと疑心暗鬼にも駆られる。
これが技術系の大学卒業者の給与が文化系の大卒者のそれを上回る理由でもあるが、技術系か文科系かを問わずに算出した大卒労働者の平均給与は、高卒労働者の平均給与より167%高い。
この格差は2002年の192%ほど大きくないが、労働人口の12・5%を占める大卒者は、失業率も3・8%で全体平均の6・7%より低い。労働人口の0・9%を占める大学院卒業者の失業率は1・4%と更に低く、就学年数と給与、雇用の安定度は明らかに相関性がある。
学歴が低いために良い条件の仕事が得られず、生活が不安定で収入も少ないという悪循環は断ち切る事が困難で、18〜25歳の青年の間では、低所得家庭中心に、就学も就職もしてない人が26・3%の710万人いる。内180万人は仕事を探しているが、就職活動もしてない人も530万人(同年齢層の19・5%)いる。
また、高校過程義務化とはいえ、進学を前提とした普通科卒で就職しても即戦力にならない若者も多く、基礎的な実務能力や技能を身に着けた専門課程修了者を求める声も高いが、現在の専門課程就学者は25万7713人で、普通科の800万人とは雲泥の差だ。
ジウマ大統領が2011年4月に発表した専門課程と雇用へのアクセス促進国家計画(Pronatec)は専門課程履修者を拡大するためのもので、普通科高校の履修内容と専門課程の履修内容を同時または並行して履修するコースと、高校過程終了後に専門課程を履修するコースを、今年だけでも16億レアルかけて充実させる。
他方、大卒者でも現場で必要な技術や能力を身に着けていない若者が多いと嘆く関係者も多く、自社で働くために必要な技術や能力を磨かせようと大学を開設する企業も出現。本当の意味で働ける人材を育てるには、底辺の底上げと教育機関の質の向上も不可欠だ。