ニッケイ新聞 2012年10月27日付け
サンパウロ市の殺人事件が9月に昨年同月比96%増え、10万人当たりの殺人事件発生数も、国連が「流行」とみなす10件を上回ったと26日付伯字紙が報じた。殺人事件増加は3月から言われていたが、この数には強盗殺人や警察に抵抗して殺された被害者は入っていない。
州都第1コマンド(PCC)と軍警と報復合戦という言葉がより頻繁に聞かれ始めた9月、サンパウロ市での殺人件数は、昨年同月の69件から135件に跳ね上がり、被害者数も71人から144人に増えた。
事件数は95・7%増であるのに対し、被害者数が102・8%増という事は、一つの事件当たりの死者が多くなった事を意味し、最近は、一晩に何人撃たれ何人死亡といった記事が多い。
このような表現の記事は、強盗殺人や犯罪組織に狙われた軍警の死も含む事が多く、サンパウロ市での9月の強盗殺人事件は13件。昨年同月は4件だから225%増となる。
また、退役者も含む軍警の死者は10月25日までに88人(勤務中の3人を含む)で、大半はPCC関係者に殺害されたと見られている。
9月の殺人事件多発地区は、市南部のパルケ・サントアントニオ、ジャルジン・エルクラノ、カッポン・レドンド、北部のジャサナン、南部のカンポ・リンポの順で、どの地区も31件以上の殺人事件が起きている。
サンパウロ市の月間殺人事件数は、84、78、96、103、103、122、106、92、106、135で、昨年同月比減は1、2、6の3カ月のみ。1〜9月では昨年同期比22%増の920件、被害者は24%増の983人だった。
州全体の殺人事件は、9月が昨年同月比26・6%増、1〜9月の累計でも昨年同期比8%増の3329件。強盗殺人事件の累計は、サンパウロ市84件(27%増)、サンパウロ州263件(17%増)で、殺人、強盗殺人共にサンパウロ市での急増ぶりが目立つ。
保安局担当者は、10万人当たりの殺人事件発生数は10・56件でほとんど変わってないから微増に過ぎないと言うが、10・56件という数字もエスタード紙が記載した7〜9月の発生率10・8件も、国連の基準でいえば「流行状態」だ。2011年は、年間を通じて10万人当たり10件以下だった。
その一方、犯罪組織の資金稼ぎの方法としての銀行強盗は減る傾向にあり、代わりに増えているとされていた自動車強盗や車の置き引きが、サンパウロ市では9月に昨年同月比51・6%減、7〜9月も昨年同期比6・8%減だった。9カ月累計ではまだ7%増だが、一般の強盗事件も9月に6・8%減などは明るい材料だ。
サンパウロ市の保安当局者は、刑務所に入れられた犯罪者が、母の日やナタール(クリスマス)などで一時出所したまま戻らず、殺人事件などを繰り返していると言うが、PCCと軍警の報復合戦説や犯罪の若年化など、気がかりな傾向は続いている。