60歳以上の出産続く=年齢制限のない人工受精=身体に危険も「生きがい」
ニッケイ新聞 2012年10月27日付け
ブラジルでは60歳以上で出産した女性が、この1年で3人いることが判明した。女性の人生の選択肢の広がりと解釈できる一方、女性の体力や胎児を含めた命の安全性についても考える必要がある。26日付けエスタード紙が報じている。
サンパウロ州サントスに住むアントニアさん(61)ジョゼ・セーザル・アルテさん(58)は、結婚後25年間子供がなかった。子供が欲しかった2人は10年ほど前に人工授精を試みたが妊娠せず、胚(受精卵)を凍結することにした。2人は養子縁組を申し込み、面接も行なったが、高齢を理由に養子縁組を拒否されて、再び人工授精を行なうことにした。
アルテさんによると、最初に頼んだサントスの専門医は断ったが、サンパウロ市の医師が引き受けてくれて成功。今月24日に、980グラムの女児と1100グラムの男児の双子を出産した。
また、サンパウロ州カンピーナス在住のマルシア・シャヴェス・ガンボアさん(61)は既に2人の子供と3人の孫がいたが、8年前に再婚したシルヴィオ・サンチェスさん(63)の子供が欲しくて専門医の扉を叩いた。既に更年期に入っていたマルシアさんは、別の女性から提供された卵子に夫の精子を注入して得た受精卵を使って妊娠し、8月20日に女児を出産。リオにも、11年生まれでまもなく1歳になる女児がいる61歳の女性がいるという。
連邦医師審議会(CFM)によると、ブラジルでは女性の体に挿入する胚の数の制限はあるが、年齢の上限は定められていない。ブラジル人工授精協会のアデリーノ・アマラル会長は「法的な制限はないものの、高齢出産は早産の危険性が高く、妊婦の高血圧や糖尿病を誘発しやすい」から55歳までにと薦める。一般的には50歳上限説を唱える人が多いという。シリオ・リバネス病院人工授精科のカルロス・アルベルト・ペッタ医師は「制限はなくても倫理的な問題がある。高齢での出産者は、何年子供を育てられるかも考えなければ」との見解を示した。
だが、高齢出産を肯定する声もある。マルシアさんの出産に立ち会った医師は「男性が70歳で子供を持てる世の中で女性が出来ないという話はない」と語り、CFMのジョゼ・ヒラン・ガロ医師は「出産技術が進むのなら、社会や出産倫理も変わってしかるべきだ」と述べている、
マルシアさんは61歳で妊娠したが、運動や栄養に留意したため体重も6・5キロしか増えず、きわめて順調な妊娠期間を過ごした。マルシアさんは現在2カ月のマルシーニャちゃんをさして「この子は私たちの人生に足りなかったものを埋めてくれたの。人生の永遠のパートナーよ」と喜びを語っている。