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サンパウロ市新市長にハダジ氏=逆風乗り越えた49歳=交通や保健の問題が課題=市議会での劣勢克服もカギ

ニッケイ新聞 2012年10月30日付け

 全国市長選の決戦投票が28日に行なわれ、サンパウロ市ではフェルナンド・ハダジ候補(49、労働者党・PT)がジョゼ・セーラ候補(民主社会党・PSDB)を敗って次期市長に当選、マルタ・スプリシー元市長以来8年ぶりのPT市長となる。29日付伯字紙が報じている。

 28日の決戦投票の結果、ハダジ氏は全得票数の55・57%の票を獲得し当選を果した。任期は2013年1月から4年間で、年間予算420億レアルの大都市を治めることとなる。
 ハダジ氏は1963年生まれで、サンパウロ総合大学(USP)で法学や経済学、哲学を専攻。同大学で政治倫理の教鞭もとる学者肌で、本格的な政治活動は2001年発足のマルタ市政で経済開発・金融局の秘書室長に就任したときからで、03年のルーラ政権発足時には、企画省の特別補佐官に就任。04年に教育省の事務局長となり、05年7月29日から12年1月24日まで教育相を務めた。
 28日夜、サンパウロ市中央部パウリスタ大通りで勝利宣言を行ったハダジ氏は「私はルーラによって送り出された2番目の候補です」と、10年の大統領選の際にジウマ大統領が同様の指摘をされたことを皮肉りながら、笑顔で聴衆の歓声に応えた。ルーラ氏は「今日の主役は私じゃない」として、会場には姿を現さなかった。
 今回の選挙を振り返り、ハダジ氏は「エベレスト山を登るような気持ちだった」と語った。PT要人が有罪となったメンサロン事件のほか、PT内部でも、サンパウロ市市長選への出馬をめぐって、出馬を希望していたマルタ氏との確執が起きた。そんな逆風の中、ハダジ氏は「新しい時代に新しい人材を」をスローガンに選挙戦を戦った。
 「サンパウロ市住民を隔てる貧富の差の壁を壊して行きたい」と抱負を語ったハダジ氏は、ビレッチ・ウニコの定期券化や「オーラ・セルタ」という新しい医療制度の導入、三つの病院建設などを公約に掲げている。新市政の課題としては、交通網や交通機関の整理、医療診察の待ち時間短縮、洪水問題、組合への負債軽減、ファヴェーラ、治安、保育所の増設、清掃問題などがあげられる。
 市議会をどうまとめていくかも大きな関門だ。サンパウロ市は伝統的にPSDBが強い都市で、13年からの市議会でもPSDB支持の議員は全55人中31人で、PT支持の議員の21人を上回る。市議会での法案通過には過半数の票が必要なため、一時はPTと同盟との噂もあったカサビ現市長とどのような関係を結ぶかが鍵になる。カサビ氏が党首を務める社会民主党(PSD)は7人の議員を抱えている。
 敗れたセーラ氏はハダジ氏に電話し、賛辞の言葉を述べたが、敗北宣言ではカサビ市政を肯定。今回の選挙で「より活力を得た」と語り、より積極的に政治活動を行うことを宣言した。