ニッケイ新聞 2012年10月31日付け
南マット・グロッソ州(MS)南部の農場に住む先住民のグアラニ・カイオワ族(以下、カイオワ族)が、裁判所の立ち退き命令に「死ぬまで闘う」と宣言、連邦政府も暫定令見直しなどを検討中と30日付エスタード紙などが報じた。
立ち退き命令が出たカイオワ族は、パラグアイとの国境に近いMS南部のピエリト・クエ/ムバラカイと呼ばれる2ヘクタールの土地に住んでいる。この土地は、イグアテミ市にある700ヘクタールのカンバラー農場とサソロ先住民保護区の境界付近にある孤立した森で、オヴィ川のほとりに位置している。
白人農場主達に奪われた先祖伝来の地を取り戻そうと、1年前からこの土地に住み着いているのは大人と子供を合わせて170人。土地分割は100年以上前に行われており、土地所有権は最高裁も保証していると理解している農場主がナヴィライ裁判所に訴え、1月前に退去命令が出た。
ところが、ここは自分達の土地だと主張するカイオワ族はこの命令を受けいれず、「自分達を連れ出そうとする人が来たら死ぬまで戦う」と宣言した。
国立インジオ保護財団(Funai)は検察庁の助けを得て暫定令差し止めに成功したが、カイオワ族は自殺率が高く、「死ぬまで戦う」という言葉が集団自殺を意味すると取られた事もあり、ジウマ大統領は29日、ジョゼ・エドゥアルド・カルドーゾ法務大臣、ルイス・イナシオ・アダムス国家総弁護庁長官と共に、先住民代表らと会合の時を持った。
MSでは27日、パラニョス農場内の保護区に住む23歳の先住民が自殺。24日には、ピエリト・クエに住む22歳の先住民女性が8人の男性に囲まれ、強姦される事件も起きている。
先住民代表は事件の調書も持参し、裁判所が先住民の土地所有権や居住権を認めないなら、メルコスル・グアラニ大陸審議会などの国際機関に訴えるとの意向を表明。会合後も、「集団自殺をすると言った事はないが、自分達の土地を守るためなら最後の1人まで戦う」と強調した。
カイオワ族の自殺率は10万人当たり62・01人で、世界保健機構が高いとみなす国内平均(12・5人)の5倍。2000〜11年の自殺者は555人で、6日に1人は自殺している計算になる。
先住民族宣教協議会(CIMI)によると、2003〜11年に土地紛争で殺された先住民は503人で、内カイオワ族は279人。MSで農地分割を含む植民地化政策が取られ始めたのは50年以上前の事だが、カイオワ族を含む先住民と農場主の戦いはそれ以来止む事無く続いている。