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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年11月6日付け

 北極海の氷が、溶けてしまい過去最少になったそうだ。日本の宇宙航空研究開発機構が観測衛星「しずく」の映像などを分析したところ、8月の末には421万平方キロと小さくなっていることが分かった。例年9月の中ごろに最少になるので恐らく400万平方キロを割り込む可能性が高いと指摘しており、地球温暖化の影響が強いと推定している。これほど速く北極海の海氷が減少すると見ていた素人は真に少ないと思う▼同機構の堀雅裕研究員は「1980年代の半分程度になっている」と語っているが、これほど急速に氷床や氷塊が溶解すると予測するのは、専門家にとっても、かなり難しいのではあるまいか。80年代には、最少のときでも、700万平方キロはあったのだから、これほど速く溶けるとは—。尤も、北極海の氷が溶けたから海面が上昇するの危険はなく、オセアニアの島嶼国家のツバルなどが、海水の侵食に困るような事態は起こらないという▼唯一つ。この地球温暖化によって北極も暖かくなり、アジアからベーリング海峡を通りヨーロッパに通じる北極航路の開発が進んでいる。中国や韓国らが特に熱心だし、日本も遅ればせながら研究に取り組み始めた。今までのようにマラッカ海峡を抜けて中東やヨーロッパに向かうよりも、航行距離が短くなり、輸出入産品の経費節減に大きな力になるためだが、あと十数年後には実現の可能性も高い▼人間がガソリンなどを燃やした結果の温暖化現象だが、これが新航路発見に通じるのは、何とも皮肉ながら、こんな地球の環境変化が起こるのは、いささか薄気味が悪い。(遯)