ニッケイ新聞 2012年11月7日付け
フェイラで買い物をして、「カプリッシャしといたよ」と言われた。辞書を見ると、「ア・カプリッショ」には「念入りに」という意味、「カプリッシャル」という動詞には「発奮する」という意味があるから、「いいのを選んであげた」とか「大きいのを入れといた」「少し奮発しておいた」といった意味らしい▼ここでふと思い出したのは、「一手間かける」事や「最後の仕上げ」の大切さだ。手作りの椅子は、最後に張るテープやそれを止める鋲の種類に質、ニスの塗り方などで、その価値が全然違ってくるという▼同じ仕事をするにも、仕事が好きか、客に喜んでもらいたい、良いものを作りたいという気持ちがあるかで出来栄えが変わる。お客やサービスの受け手も、良い仕事をしてもらえば嬉しく、同じ人に頼もうかという話になるが、出来上がった品や提供されたサービスがいい加減なら、二度と頼むものかと思ってしまう▼そういう意味で、記事を書く時も「仕事を楽しみ」「読み手に喜んでもらいたい」と考えるか、「これだけ書いとけばいいさ」とか「紙面が埋まれば」と考えるかで、内容の濃さや質が変わり、読者からの反応や記者自身の手応えも変わって来る▼『1分間マネージャー』という本には、1分で褒める、1分で叱る、1分で読めるようまとめた目標を持つという3原則が載っており、この原則を使いこなせる人は自分の居場所がわかり、自分自身を客観的に褒められるとも。「カプリッシャ」して自分も相手も満足すれば仕事は楽しくなる。カプリッシャードな報酬でもあれば、さらに小躍り間違いなしかも。(み)