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アルゼンチン=70万人が首都でデモ=経済危機や国の混乱に怒り=クリスチーナの支持率急落

ニッケイ新聞 2012年11月10日付け

 クリスチーナ政権に不満を抱くアルゼンチン国民70万人が8日夜、ブエノスアイレス市内でデモ行進を行なった。9日付伯字紙が報じている。
 8日夜、この日にちなんで「8N」と名づけられたクリスチーナ政権に反対する集団約70万人が、鍋を叩きながらのデモを行なった。ブエノスアイレスの中心にある7月9日大通りは人で埋め尽くされ、国のシンボルであるオベリスクの前でも、溢れかえった群衆が治安の改善や表現の自由、そして、クリスチーナ大統領の再選反対を叫んだ。同大統領は11年10月に既に2期目の当選を果たしており、3選は憲法で禁じられているが、政府の公式な動きではないにせよ、知識人の間で3選を可能とするような憲法改正の案が浮上し話題となっていた。
 ブエノスアイレスと同様のデモ行進はロザリオやコルドバ、メンドーサといったアルゼンチンの他の都市でも起こり、国外のアルゼンチン人も米国やオーストラリア、欧州でもデモが発生。ブラジルでもサンパウロ市で小さな団体ではあったが、パウリスタ大通りにあるアルゼンチン総領事館の前で集会を行なった。これらの抗議活動は平和裏に行われ、反クリスチーナ派の野党議員の参加はほとんどなかった。
 今回のデモは、クリスチーナ氏が2007年に大統領に就任して以来最大の規模となった。インフレ率は政府発表の10%とかけ離れた25%とされ、輸入制限は国際問題化、アルゼンチン人によるドル購買制限など、アルゼンチン経済は混乱。加えて、犯罪率が上昇し、内閣では汚職問題が相次いでいる。そこに加え、敵対するメディア最大手のクラリン社の業務縮小を進めるなど、メディアに対する言論統制の問題もある。
 こうしたことがらを反映し、8月のクリスチーナ大統領への評価は、支持30%、不支持39・3%で、就任以来はじめて不支持が上回った。11年10月の大統領当選時は64・1%だった支持率は、1年足らずで6割近く落ち込んだ。
 こうした国民の不満に火をつけたのは、7日に起きたブエノスアイレスの大停電だった。市民300万人の生活に支障を来たし、交通網がパニックとなるという混乱は、9月13日の首都での鍋叩きデモなど、各地で小規模ながら起きていた抗議行動を一気に爆発させるきっかけとなった。
 このデモを受け、クリスチーナ大統領はフェイスブックで「アルゼンチンはかつてない表現の自由の世を生きている」とのデモを皮肉るようなコメントを出して応えた。